我々ヒトを含めた動物がより豊かに生存するために、報酬に関連する重要な情報を、適度な動機を保ちつつ選択、学習記憶し、後の行動に活かすことが重要である。前頭前野の一領域である眼窩前頭皮質は、このような報酬に基づく「学習記憶ダイナミズム」の高次制御を担う可能性があるが、どのようにその機能を果たすのかについては多くが未解明である。そこで一般的に遺伝子改変に用いられるC57BL/6マウス系統にて、条件刺激1ー報酬獲得、および条件刺激2ー報酬なしの関係をまず学習させ、その関係を後に逆転させる(刺激1-報酬なし、刺激2ー報酬あり)逆転学習を確立した。次に、まずマウスの眼窩前頭皮質にウイルスを用いて赤色反応性の活動抑制分子を発現し、上記の逆転学習時において、条件刺激1提示中、もしくはその後の報酬が提示されなくなるタイミング特異的に、眼窩前頭皮質の活動を抑制したところ、次の条件刺激2に対する反応行動が、それぞれ、上昇、抑制される傾向にあることを見出した。両者を合わせたタイミングの抑制、および逆転が起こらない状況での抑制した場合はコントロールと比べて優位な差を認めなかった。 従来の研究では、条件刺激と報酬間関係の柔軟な学習が必要とされる状況において、タイミングおよび状況特異的な眼窩前頭皮質の役割は明らかになっていない。よって、結果は眼窩前頭皮質の正確な役割の理解に貢献する。今後さらに異なる条件、その神経回路機構などについて研究を進め、眼窩前頭皮質の統合的な機能理解を目指す。
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