公募研究
申請者らはこれまでに160以上の異なる系統の遺伝子改変マウスに「網羅的テストバッテリー」を行い、各種の行動異常を示すマウスや精神・神経疾患などのモデルマウスを同定してきた。この中には海馬歯状回の神経細胞が未成熟な状態である「非成熟歯状回)」を持つマウスが複数系統見つかっており、これらのマウスでは共通して遠隔記憶が障害されている。このことから非成熟歯状回は遠隔記憶の障害に重要な役割を果たしている可能性が高いと考えられる。また、神経の過活動により海馬歯状回が脱成熟することが明らかになっており、神経細胞の活動性を人為的に操作することで歯状回の成熟度を双方向的に変化させることができるようになりつつある。本研究では、幼若期のマウスにおいて海馬歯状回を人為的に成熟させ、幼若期のマウスに成熟した海馬歯状回を持たせることで幼児性健忘が阻害されるかどうかを検討し、幼児性健忘と歯状回成熟度の関係を明らかにする。本年度は光遺伝学による歯状回特異的な神経活動操作が行動レベルでどのような効果を及ぼすかを主に検討した。歯状回特異的に Cre リコンビナーゼを発現する Pomc-Cre マウスに、 Cre 依存的に光感受性タンパク質を発現させるマウスを掛け合わせることで歯状回特異的に光感受性タンパク質を発現させたマウスを得た。このマウスに光刺激を与え、歯状回の神経細胞に特異的に神経活動を引き起こし、行動および海馬歯状回の成熟度にどのような変化が生じるかを解析した。また、Cre 依存的に光感受性タンパク質およびデザイナー受容体タンパク質を発現する アデノ随伴ウィルスベクターの接種による発現システムのセットアップも行った。
2: おおむね順調に進展している
当初の研究実施計画では平成26年度から27年度にかけて、①歯状回顆粒細胞の選択的興奮性操作が脳成熟度に及ぼす効果の解析、②幼若期に歯状回を成熟させ幼児性健忘への影響を検証する予定であった。このうち①については既に予備的なデータを得ている。②については27年度に重点的に行う予定である。したがって本研究課題はおおむね順調に進展している。
本年度までに光遺伝学による歯状回特異的に神経活動を引き起こす手法が確立された。今後はこのシステムを活用し、歯状回の成熟度について双方向性の操作を試みる。一方で歯状回特異的に神経活動を特異的に抑える系についてはまだ確認できていない。来年度は抑制性の神経活動操作についても手法を確立し、神経活動の双方向席手な操作を確立し、それによって神経細胞の成熟度の双方向的な操作を実現する。
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すべて 雑誌論文 (9件) (うち査読あり 9件) 学会発表 (12件)
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