真核細胞内で、細胞小器官は微小管上をモータータンパク質キネシンやダイニンに輸送される。微小管は細胞内に張り巡らされており、この輸送により生命活動の維持に必要な物質が細胞内に行き渡る。本研究課題では、少数性生物学の観点から、1つの細胞小器官を輸送するモーターの数を研究テーマにした。複数モーターによる細胞小器官の協同輸送の解明を目指した。
マウスから神経節を採取し、培養した。培養から数日後、蛍光色素を用いて神経細胞内のエンドソーム輸送を蛍光顕微鏡で観察した。高い時間分解能で測定すると、熱揺らぎ等の影響でエンドソーム重心位置はゆらぐ。このゆらぎを利用してモーターの出す力を測定する理論を構築し、エンドソーム輸送の実験に応用した。その結果、このようにして測定した力の分布は、離散的であり少数のピークを持ち、このピーク数がモーターの数に相当すると考えられる。同一の細胞小器官の結果からモーター数が多いと速度が速くなる現象が観察されており、複数モーターによって速度が大きくなる可能性が示唆された。また、試験的な結果であるが、ミトコンドリア輸送について調べると、エンドソーム同様に離散的な力の分布を得た。これより細胞小器官輸送では一般的に複数(少数)モーターによる協同輸送が行なわれている可能性がある。
今後は、本研究で開発した手法をアミロイド前駆タンパク質、シナプス小胞前駆体など医療と関連の深い小胞輸送にも応用したい。
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