研究領域 | 少数性生物学―個と多数の狭間が織りなす生命現象の探求― |
研究課題/領域番号 |
26115707
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
藤原 敬宏 京都大学, 物質-細胞統合システム拠点, 講師 (80423060)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 1分子計測 / 3次元追跡 / 超解像 / 細胞膜 / 接着構造 |
研究実績の概要 |
本研究では、(1)縦横30ミクロン、高さ最大10ミクロンの3次元体積中に存在する細胞膜分子の運動を、1分子毎にビデオ速度で多数同時に追跡する「3次元1分子追跡」を、「生細胞超解像(PALM)観察」(市販の装置より100倍近く速い)と組み合わせる。この「3次元1分子追跡-PALM複合顕微鏡」で、(2)「フォーカルアドヒージョン (FA)、「アドヒーレンスジャンクション (AJ)」、「シナプス」などのミクロンスケールの接着構造をPALM観察しながら、同じ3次元視野中で、構成分子群の1分子追跡をおこなう。それにより、「4-20個程度の構成分子からなる過渡的少数分子複合体(寿命~0.1-10秒)がユニットとなり、これらの大きな接着構造の急速な形成と分解を可能にしている」という作業仮説の検証を目的としている。 本年度は、以下の研究進捗があった。 (1)前半(平成24ー25年度)の公募研究で開発した、3次元1分子追跡顕微鏡システムに、同視野で、生細胞超解像 (PALM) 観察をおこなうための光学系を追加した。 (2)波長405 nmによる光制御と、488または561 nmによる励起により、接着構造マーカー分子の生細胞PALM観察の条件検討をおこなった。これまでのところ、Dronpa、mEos3.2をプローブとして、時間分解能1ミリ秒で3-5秒間(3,000-5,000フレーム)撮影をおこなうことにより、1枚の超解像画像を再構成できることがわかった。これを繰り返すことにより、蛍光プローブのシグナルがフォトブリーチで消失するまでは、接着構造の超解像微細構造の変化を追うことが可能である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
従来の顕微鏡システムに、生細胞超解像 (PALM) 観察をおこなうための光学系を組み込み、2次元では構成分子の1分子運動との同時観察ができるようになった。接着構造の生細胞PALM観察の条件検討とソフトウェアの3次元化の拡張をすすめ、「3次元1分子追跡-PALM複合顕微鏡」を完成する目処がついた。
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今後の研究の推進方策 |
早急に「3次元1分子追跡-PALM複合顕微鏡」を完成する。2台の高速カメラ間の画像の重ね合わせと光学系制御の精度を改善し、1蛍光分子追跡および超解像画像取得のための3次元位置決め演算の高速化・並列化を図る。完成した顕微鏡システムをもちいて、 (1)FAやAJなどの接着構造において、構成分子の過渡的少数分子複合体がどのように動き、会合し、解離し、接着構造を形成していくか、さらに、接着構造の分解が分子レベルではどのように起こるか、を解明する。 (2)シナプスの形成/分解における、過渡的少数分子複合体の関与を調べる。 (3)1分子運動の自由度を下げ、分子種を選択し、少数分子のダイナミックな複合体形成を促す分子機構としてこれまで私が見出してきた、① アクチン膜骨格の網目による運動の閉じ込めと衝突/会合の誘導、② スキャッフォールド分子による異種分子の共局在の誘導、③ 分子間のアフィニティーを利用したセグリゲーション、④ 輸送小胞への選択的濃縮と極性輸送、の仮説のうち、(1)と(2)の過程にどの分子機構が利用されているか、あるいは、それ以外の機構が存在するかを調べる。それにより、分子が少数性を発揮できる場を生むための原理に迫る。
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