研究実績の概要 |
動物細胞の多くは有糸分裂期になると細胞の形を丸く変化させ、赤道面に収縮環と呼ばれるリング状のバンドル構造を形成させる。収縮環は主にアクチン繊維とミオシン分子モーターから構成されており、アクトミオシンの収縮力で細胞膜をくびれさせることで細胞は分裂を行なう。初年度の平成26年度は収縮環が自己組織化される仕組みを調べるため、細胞から単離したアクトミオシンを細胞サイズの球状閉鎖空間(油中液滴)に閉じ込めた人工細胞系を開発した(Miyazaki, Chiba, Ishiwata, Protoc. Exch. (2015))。この人工細胞系を用いて、収縮環様のリングが自発的に形成されうるかを調査した。その結果、アクチンモノマー、ミオシンとアクチン繊維の束化因子を液滴に封入してアクチンを重合させると、「液滴サイズ<アクチン繊維の持続長」の条件を満たす場合は収縮環様のリングが自発的に形成されることを発見。アクトミオシン活性の空間制御シグナルが無いにも関わらず、リングは必ず赤道面に形成され、アクチン繊維に結合しているミオシン分子の密度の上昇によりリングは収縮した。これらの研究によって、収縮環形成における微小閉鎖空間の物理的寄与を明らかに出来たと考えられる(Miyazaki, Chiba, Eguchi, Ohki, Ishiwata, Nat. Cell Biol. (2015))。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度は、細胞から単離・精製したタンパク質を細胞サイズの液滴に封入する技術を確立し、収縮能を持ったアクトミオシンリングを自己組織化させることに成功した。これらの研究によって収縮環の自己組織化機構における微小閉鎖空間の物理的寄与を明らかにすることができた。また、細胞サイズの油中液滴をリポソームに変化させる手法(界面通過法)を習得し、個々のリポソームのラメラリティー(膜の多重性)を顕微鏡下で計測する手法を開発。界面通過法で作製したリポソームは、90%以上の高効率で細胞膜と同じ単層の脂質二重膜から成っていることがわかり、モデル細胞構築に適したリポソーム作製法であることを示した(Chiba, Miyazaki, Ishiwata, Biophys. J. (2014))。
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