公募研究
神経伝達物質のシナプス小胞への再充填は、液胞型プロトンATPアーゼが形成する小胞内外のプロトン電気化学勾配によって駆動される。一方で、再充填のプロトン化学勾配依存性は神経伝達物質によって異なることが示唆されているものの、神経伝達物質によって小胞内外のプロトン勾配が異なるか否か、再充填過程でのプロトンの共役機構は知られていない。当該年度は、哺乳類脳内の主要な興奮性伝達物質であるグルタミン酸を含む小胞と抑制性伝達物質であるGABAを含む小胞における小胞内pHと緩衝能、及び、リサイクリング中の再酸性化時におけるプロトンの挙動を定量することを試みた。その結果、GABAを含む小胞はグルタミン酸を含む小胞に比べて定常状態の小胞内pHが顕著に高く(pH 6.5)、また小胞内腔緩衝能が約2分の1と低いことがわかった。電気刺激によりエキソサイトーシスを喚起し、その後のエンドサイトーシスと酸性化をモニターすると、興味深いことに抑制性ニューロンでは、エンドサイトーシス後に小胞が一旦過剰に酸性化され、その後徐々にアルカリ化が進み定常状態のpHに回復する現象が観察された。このGABA小胞に特徴的な小胞内pH変化がプロトン依存性のGABA再充填機構と共役しているか否かを検討するために、GABA輸送を司るVGAT欠損ニューロン培養を作成し、小胞内pHの測定を行ったところ、高い定常状態pHと再酸性化における特徴的なプロトンの挙動は見られなかった。これらの結果から、GABAの小胞再充填はGABAとプロトンの交換によって起こり、その時定数は35℃において約25秒程度の遅い反応であることが推察された。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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