研究領域 | 動的クロマチン構造と機能 |
研究課題/領域番号 |
26116501
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
田中 耕三 東北大学, 加齢医学研究所, 教授 (00304452)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 細胞・組織 / DNA損傷応答 / へテロクロマチン / 染色体分配 / 癌 |
研究実績の概要 |
本研究は、クロマチン構造変化とDNA損傷応答、染色体分配の関連について解析し、CAMP, REV7, HP1 からなる複合体(CRH複合体と呼ぶ)がこれらの機能を統合している可能性を検討することを目的とする。H26年度は以下のような成果が得られた。 1. 培養細胞でのCRH複合体の機能解析 分裂期にCAMPは染色体および紡錘体に局在するのに対し、REV7は紡錘体に局在し、HP1は染色体に局在した。一方間期には、CAMP, REV7, HP1共に核に局在することがわかった。これらの分子をノックダウンしたところ、分裂期において染色体分配の異常が見られたが、その頻度はCAMPノックダウンに対して他の2つのノックダウンでは低かった。DNA損傷応答については、CAMPおよびHP1gammaのノックダウンで放射線感受性の上昇が見られた。増殖能については、CAMP, HP1gamma, REV7のノックダウンでコロニー形成能の低下が見られた。またヌードマウスに移植した細胞の腫瘍形成能については、CAMPノックダウンにより低下が認められた。 2. CAMPノックアウトマウスを用いたCRH複合体の機能解析 CAMPは脳・精巣・卵巣・胸腺で発現している。CAMPノックアウトマウスを作成したところ、出生直後に死亡することがわかった。またCAMPヘテロノックアウトマウスの精巣において精子形成能が異常であることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
H26年度においては、CAMP, REV7, HP1の細胞内局在を明らかにし、それぞれのノックダウンによって染色体分配・DNA損傷応答・細胞増殖に影響が見られることがわかった。このことはCRH複合体が染色体分配・DNA損傷応答の双方に関与しているという当初の予想を裏付けるものである。一方個体レベルでの解析において、CAMPのホモノックアウトマウスが胎生致死ではなく出生直後に死亡するという結果は、CAMPが培養細胞において染色体分配に必須であるという結果からは意外であった。しかしCAMPノックアウトマウスの異常はREV7, HP1のノックアウトマウスと共通する点を持っており、またCAMPの明らかな発現が一部の臓器に限られていることを考えると、個体におけるCAMP欠損の影響は一部の臓器に強く現れるのではないかと考えられた。以上よりCRH複合体の機能を明らかにすることを目的とする本研究は、おおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
H26年度の成果をふまえ、H27年度は以下のように研究を推進する。 1. 培養細胞でのCRH複合体の機能解析 まずCAMP, REV7, HP1の細胞内局在の相互依存性を検討する。この際トリメチル化されたH3K9が局在するへテロクロマチン領域への局在や、放射線照射等によるDNA損傷部位への局在の相互依存性についても調べる。またCAMP, REV7のヘテロクロマチン形成への関与およびゲノム上の分布についても明らかにする。 2. CRH複合体の生化学的解析 生化学的にCAMP, REV7, HP1の分子間の結合様式・結合部位を決定する。またこれらの分子間の結合部位の変異体の機能異常について検討する。 3. CAMPノックアウトマウスを用いたCRH複合体の機能解析 CAMPノックアウトマウスが出生直後に死亡する原因として、CAMPが脳で発現していることを鑑みると、神経の異常による呼吸不全などが考えられる。そこでCAMPノックアウトマウスの脳をはじめとする組織の異常を調べ、CAMPの個体でのはたらきを明らかにする。またCAMPノックアウトマウスよりMEFを採取し、細胞レベルでのCAMPノックアウトの影響を調べる。
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