ヒストンH3のバリアントであるCenp-Aが集積するセントロメアクロマチンは、有糸分裂期に構築される動原体の基礎構造をなす。Cenp-Aのクロマチン上での集積は、各染色体に一カ所に起こり、集積する領域のサイズと各染色体上での位置は一定であるという規則に従う。この規則は、核型(生物種ごとに定まった染色体の形と数)を維持するための礎となる。申込者らは、Cenp-Aの集積に関わる規則を維持するためには、Cenp-Aを取り込む機構のみならず、不適切に取り込まれたCenp-Aを排除する機構が必要であると考えた。27年度の本研究では、新規Cenp-Aの排除機構としてUDEC(Cdc48/p97によるUbiquitin-dependent extraction from chromatin)を同定・解析した。この複合体は、有糸分裂期にオーロラキナーゼやCdt1等をクロマチンから除去することが知られている。同様の活性によりセントロメアクロマチンに過剰に取り込まれたCenp-Aが排除されるものと考えられる。 またセントロメアタンパク質Cenp-Cの変異体も同定・解析し、この変異体では、Cenp-Aが染色体椀部にも取り込まれることも見いだした。さらに、セントロメアクロマチン領域を核膜に繋留する因子Csi1の欠損により、Cenp-Aの排除機構が機能不全に陥ることも見いだした。この結果は、特に前年度に解明した19S プロテアソームがCenp-Aの排除する機能が核膜に繋留されることに依存することを強く支持する。
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