研究実績の概要 |
クロマチンの基本構成単位であるヌクレオソームは、4種類のヒストン(H2A, H2B, H3, H4)が2つずつからなるヒストンコアにDNAが巻き付いた構造をしている。加えてこの正準型のヌクレオソームとは異なったヌクレオソームが存在し、動的な性質を含めクロマチンの機能と深く関連していると考えられている。このような変異型ヌクレオソームの機能発現時に対応すると考えられる溶液中での構造に興味が持たれている。そこで本研究では、中性子及びX線小角散乱(SANS・SAXS)法を用いてこれらの変異型ヌクレオソームの溶液中での構造を解析し、その機能・動的性質の解明を行う事を目的としている。特にヒストンとDNAの中性子に対する散乱能が異なっているため、溶媒のH2O/D2O比を変えることで、ヌクレオソーム中のヒストンもしくはDNAの構造を選択的に観測することが可能となる( CV-SANS法)。今回はH2Aが変異型H2A.Bに置換したヌクレオソームの溶液中での構造解析をCV-SANS用いて行った。H2A.Bは転写活性領域に多く存在しており、ヌクレオソームの機能活性化と深く関係していると考えられる。SAXSによる全体観測によりDNAの広がりが示唆されているが、CV-SANS法による観測によりDNAの広がりに加え、ヒストンテールのヒストンコアへの吸着度が正準型ヌクレオソームに比べ高い事が観測された。これはヒストンテールの挙動がDNAの解離と深く関連していることを示す新しい地検である。
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