公募研究
クロマチンの基本構成単位であるヌクレオソームは中性子小角散乱(SANS)法の最適な試料の1つである。ヌクレオソームは4種のヒストンと呼ばれるタンパク質からなる8量体コアにDNAがおよそ1.6回転巻き付いた構造をしている。中性子から見るとタンパク質とDNAは散乱能が異なるためSANSの特徴である溶媒コントラスト変調(CV-SANS)法を用いることで、溶液中のヌクレオソームのヒストンコアとDNAの構造を個別に測定することが可能となる。本研究では、全体の外形を捉える事に優れているX線小角散乱(SAXS)法および計算機シミュレーションをCV-SANS法と相補的に用いることで、より詳細にヌクレオソームの溶液中での構造を解明することを目的とする。ヌクレオソームにおけるDNAのヒストンコアへの結合は安定であり遺伝子の貯蔵庫として非常に優秀であるが、遺伝情報の転写・修復などの活性時にはヌクレオソームはこの安定構造か離れる動的な存在でもある。この変調構造を誘発するさまざまな因子が知られているが、8つのヒストンの内のいくつかの変異型ヒストンへの置換もその一つである。本研究ではH2AヒストンがH2A.BおよびH2A.Zに置換した変異型ヌクレオソームの構造をSAXS及びCV-SANS法を用いて解析を行った。その結果、H2A.BヌクレオソームではDNAがヒストンコアから大きくかい離しているとともにヒストンテールも広がっていることが示された。一方、H2A.ZヌクレオソームではDNAのかい離は観測されなかったが、DNAとヒストンコアとのPackingが緩んでいることが示唆された。これらがDNAの転写等に深く関与していると考えられる。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件、 招待講演 2件)
Biochemistry and Biophysics Reports
巻: 4 ページ: 28-32
10.1016/j.bbrep.2015.08.019