公募研究
当該研究ではクロマチンのエピジェネティック制御に重要な役割を果たすと考えられるlncRNAがどのように標的クロマチン領域をターゲティングし,その効果を発揮するのかを理解することを目的とした.具体的には,哺乳類のメスの細胞でX染色体を覆い,そのヘテロクロマチン化を引き起こすXist RNAとその局在制御に関与することが示されたhnRNP Uに着目して解析を行ってきた.hnRNP Uの完全機能欠損マウスは報告されていなかったので,条件的ノックアウトマウスを作製した.完全機能欠損アレルへ変換後,ヘテロ接合体同士を交配し,ホモ接合体の表現型を解析した.その結果,ホモ接合体は着床前後の時期に致死となることがわかった.また,分離比からヘテロ接合体のうち離乳に達するものは期待される頻度の20%程度であることが示唆された.胚発生に重篤な影響をもたらす単純な機能阻害では解析が困難と思われたので,タモキシフェン投与により条件的にhnRNP Uの機能を阻害できるコンディショナルアレルを持つメスの胚線維芽細胞(MEF)あるいはメスのES細胞を胚盤胞から樹立し,胚に代わる解析系を確立することを試みた.その結果得られたこれらの細胞で, hnRNP Uの機能を条件的に阻害してみると,いずれの場合も雌雄の別なく細胞は数日で死ぬことから,hnRNP Uは細胞の生存に不可欠であることがわかった.メスの細胞でhnRNP Uを阻害した後,細胞が死ぬまでの間に免疫RNA-FISHを行うと,不活性X染色体に局在するXist RNAは失われ,H3K27me3の集積も観察されなくなったことから,hnRNP UがXist RNAのクロマチンターゲティングに不可欠であることが確認された.hnRNP Uが他のlncRNAのクロマチンターゲティングにも関与するかについては,解析中のため現時点では不明である
27年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2015
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 謝辞記載あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (11件) (うち招待講演 3件)
Development
巻: 142 ページ: 4299-4308
doi:10.1242/dev.128819
Nature comm.
巻: 6 ページ: 8564
doi: 10.1038/ncomms9564