公募研究
本研究では、分裂酵母をモデル生物に用い、非コードRNAによるストレス応答性転写活性化時のクロマチン動構造制御の分子機構を解明することを目的とし、研究を推進し、今期は以下の主要な成果をあげた。(1) グルコース飢餓によって活性化するfbp1遺伝子座のクロマチン構造変化にはTup11-12が抑制的に関与し、少なくとも以下の、(i)転写因子結合部位のクロマチンを閉じる(ii)TATA領域のクロマチンを閉じる(iii)転写基本因子の結合を阻害、の3点で阻害しているが、転写活性化因子Atf1(CREB転写活性化因子), Php5(CBF転写活性化因子),Rst2(Zn-finger転写活性化因子)がそれぞれ(i-iii)の機構を拮抗阻害することで、fbp1の転写活性化を行っていること、(2) Php5とTup11-12による制御が転写開始点の精密決定に寄与することの2点を見出し、論文発表した(Asada et al Mol Cell Biol 2015)。さらに、転写活性化に先立って、プロモーター領域のクロマチン構造の再編成とともに、この領域内でループ構造が形成され、ループ内にTup11-12が集積していることが見出された。さらに、このループ構造形成はクロマチン再編成に共役して転写される非コードRNAに依存することが判明した。クロマチン再編成に影響を及ぼさないが、部分的に非コードRNA転写が阻害される変異体を作製すると、タイムリーな転写活性化が見られず、転写活性化因子の結合も低下することから、ループ構造形成することで活性化因子の結合の安定化とその後のタイムリーな転写活性化を促進するという新規の非コードRNAによる染色体構造制御機構を発見した。
1: 当初の計画以上に進展している
当初予定していた計画よりも多くの研究データを得ることができ、大きく研究が進展した。特にプロモーター領域内のシス転写結合領域同士のループ形成を非コードRNAが促進する機構を発見できたことで、今後の研究の方向性を大きく転換できた(未発表)。非コードRNA転写はクロマチン再編成時の通過したポリメラーゼの痕跡と思われてきたが、本研究でクロマチン再編成後にも非コードRNA分子が積極的な転写活性化機能を果たしていることがわかった。
H27年度は非コードRNAによるループ形成のモデルを完成させ生理的意義に迫りたい。そのために以下の実験を行う。(1) 転写活性化因子Atf1, Php5, Rst2の3種の相互作用と、これらとRNAとの相互作用の検討(2) Tup11-12と3種の活性化因子の相互作用。(3)非コードRNAが活性化因子同士の相互作用を増強することで、ループ形成を促進しているのか検討する。さらに、ヒストン修飾やリモデリング因子との関わりについて検討を行う。SAGA複合体HATやSWI/SNF2 ファミリーのリモデリング因子による経路や(Hirota et al 2008 Mol Biol Cell)、SET1(メチル化酵素)による修飾の意義など、変異体を用いた解析を行い、これらの経路がクロマチン再編成やループ形成に関わるのか検討する。また、ループ不良の細胞でのヒストン修飾の影響も探索する。このようなゲノム動構造制御における非コードRNAの機能を軸とした研究を推進することで、細胞がストレスを受けた時の恒常性維持の戦略を理解する。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (8件) (うち国際共著 1件、 査読あり 8件、 謝辞記載あり 5件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (9件)
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