研究領域 | 動的クロマチン構造と機能 |
研究課題/領域番号 |
26116521
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研究機関 | 明星大学 |
研究代表者 |
香川 亘 明星大学, 理工学部, 准教授 (70415123)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ヌクレオソーム / クロマチン / X線結晶構造解析 |
研究実績の概要 |
本研究は多様なヌクレオソーム構造をX線結晶構造解析法により明らかにするための技術開発を目的としている。近年動的なクロマチン構造を研究する上で、ヌクレオソームの立体構造に、ヒストンテールが受ける化学修飾に加え、ヒストンバリアント、特殊なDNA配列、ヌクレオソーム結合因子などがどのような影響を及ぼすのかが重要な研究課題となっている。これまでに数多くのヌクレオソームの結晶構造が報告されているが、いずれも1997年にRichmondらによって明らかにされたヌクレオソーム構造を元に分子置換法によって解かれている。この方法は、解析を行っているヌクレオソームの構造が既知の構造と似ている場合には有効であるが、似ていない場合は構造を解くことができない。そこで本年度は、ヌクレオソームに重原子を部位特異的に導入し、重原子の異常散乱を利用して構造解析を行うことを目指した。この方法は、ヌクレオソームの構造が既知の構造と大きく異なる場合も構造決定が可能であることから、ヌクレオソームを対象にしたX線結晶構造解析の基盤的な技術となりうる。まずヌクレオソームへの重原子の導入を検討するために、ヒストンのメチオニンをセレノメチオニンに置き換えた重原子置換体の調製を行った。ヒストンはメチオニンの数が少ないため、ヒストンH3、H2A、およびH2Bのヒストンフォールドに存在するロイシンをメチオニンに置換した点変異体を複数種類作製した。これらメチオニン点変異体ヒストンを用い、野生型ヒストンを用いた場合と同様にヌクレオソームを再構成することに成功した。次に、再構成に成功したメチオニン点変異体ヒストンのセレノメチオニン置換体を大量調製し、それを用いてヌクレオソームの再構成と結晶化を行った。その結果、長さが数100ミクロンの棒状の結晶が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
重原子を導入したヒストンの大量調製およびそれを含むヌクレオソームの再構成と結晶化に成功した。これは当初の目標に準じた成果であり、研究は計画通りにおおむね順調に進んでいると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
重原子を導入したヒストン含むヌクレオソームの結晶を用い、X線結晶構造解析を行う。これと並行して、ヌクレオソームの結晶化においてクリスタル・パッキングの影響を軽減することを目的として、ヌクレオソーム同士の間隔が開いた状態での結晶化を試みる。そのために、ヌクレオソームと共結晶化するスペーサータンパク質の開発を行う。これまでの研究で、スペーサータンパク質は結晶化が困難な膜タンパク質などに用いられている。研究者らはスペーサータンパク質の候補として、過去の研究から結晶化しやすいことが分かっている大腸菌YncEタンパク質をはじめに、様々なタンパク質とヌクレオソームとの共結晶化を試みる。
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