研究実績の概要 |
染色体上のクロマチン構造は、染色体DNA複製時には確実に保持される。これは複製因子とクロマチン構造に関わる因子が協調して働き、複製後にも複製前と同様のクロマチン構造を維持しているためだと考えられている。しかし、複製フォークでのクロマチンの挙動は未知の部分が多い。我々はこの問題に、in vitroの反応系を用いて取り組んでいる。 DNA複製の際には、2本鎖のDNAを1本鎖にほどくヘリカーゼが複製フォークの先頭を進む。真核生物では、ヘリカーゼ活性のコアはMcm2-7(ヘテロ6量体)であるが、これだけでは強い活性は示さず、2つの複製因子、GINS(Sld5, Psf1, Psf2, Psf3からなるヘテロ4量体)とCdc45が複製開始時に加わったCdc45-Mcm2-7-GINS (CMG)複合体が複製フォークで活性型のDNAヘリカーゼとして働く。そこで、我々は酵母CMG複合体の全サブユニット(11ペプチド)を同一の酵母細胞で発現し、そこからCMG複合体を精製した。精製したCMG複合体は裸のDNAを基質にすると、プロセッシブなヘリカーゼ活性を示した。次に、出芽酵母の精製ヒストンから複製フォーク様DNA上にヌクレオソームを再構成し、精製したCMG複合体のヘリカーゼ活性を調べた。その結果、ヘリカーゼ活性は検出されるものの、ヌクレオソームはヘリカーゼ活性を阻害する傾向にあることがわかった。一方、クロマチン構造を持ったDNA基質をin vitroの複製系に投入すると、裸のDNA同様に複製されることがわかった。しかし、裸のDNAとクロマチンDNAの複製様式の違いは現在のところ分かっていない。
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