公募研究
細胞はミトコンドリアで酸素を燃焼させることにより、生存に必要なエネルギーの大部分を得ている。そのため、細胞への酸素供給が低下すると、生命の存続を脅かす「低酸素ストレス」となる。一方、生体は低酸素ストレスに対する防御機構を備えており、低酸素誘導性転写因子HIFを中心とした遺伝子発現様式の変化が分子基盤となっている。低酸素応答機構では、赤血球産生や血管新生などに関連した遺伝子発現が誘導され、エネルギー産生経路はミトコンドリアに依存しない解糖系に切り替わる(代謝リプログラミング)。この低酸素誘導性代謝リプログラミングでは、HIFによる遺伝子発現誘導に加え、酸素や代謝産物・基質の量的変動によって様々な酵素の活性が変化することが重要な引き金となる。肝臓特異的にHIF抑制因子PHDを欠損した遺伝子改変マウスを樹立し、解析を行った。その結果、HIF因子群のなかでもHIF2が肝臓における造血因子エリスロポエチン産生に重要な役割を担っていることが明らかとなった(Tojo et al, Mol Cell Biol 2015)。また、HIFを強制活性化したマウス肝臓には、脂肪およびグリコーゲンの著しい蓄積を観察した。さらに、HIF2はHIF3の発現を誘導すること、HIF3はHIF2による転写活性化を抑制的に制御することを見出した。肝臓の培養細胞を用いた解析からは、HIFが低酸素環境下ではクロマチン構造変換を介して転写を誘導することを明らかにした。一方、腎臓においては、PHD因子群のなかでもPHD2がHIFの制御において重要であることを示した(Souma et al, J Am Soc Neph 2016)。さらに、PHD2の活性化は腎臓病におけるエリスロポエチン産生低下を抑制したことから、腎性貧血治療におけるPHD阻害剤の有効性を示すことができた。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (10件) (うち国際共著 2件、 査読あり 5件、 謝辞記載あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 2件)
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