公募研究
細胞分化の方向性やタイミングの制御は、ヒストンやDNA のメチル基着脱などによるエピジェネティクス制御が担う。しかし、どのように分化すべき細胞が多分化能細胞から選抜され、どのように分化制御のスイッチが入るのかはよくわかっていない。未分化細胞と分化細胞で消費量や産生システムが異なるエネルギー代謝の変化が、謎を解く鍵の一つと考える。研究代表者は、血球分化におけるエピジェネティクス制御の分子機構の研究を行ってきた。その過程で、ヒストン脱メチル化酵素LSD1 が血球分化を促進することをゼブラフィッシュ遺伝学を駆使して発見した。本課題研究では、血球-血管内皮共通前駆細胞から最終分化を遂げた赤血球までの赤血球分化過程において、LSD1 複合体がFAD 結合性を含め、どのように変化し、どのようにエネルギー代謝と関連し、どのようにエピジェネティクス制御が変遷させるかを、明らかにすることを目的とする。目的達成のために、本年度は、さまざまな血球分化段階のLSD1 複合体を単離できる多重トランスジェニック系統の開発、を試み、血球前駆細胞をセルソーターにより、特異的に取り出すことができるようになった。ただし。LSD1複合体を単離するためのトランスジェニック系統の開発はまだ達成しておらず、次年度の継続課題として残った。一方、FAD合成酵素であるflad1変異系統の樹立には成功し、造血発生におけるFAD合成の影響を観察する準備が整った。
2: おおむね順調に進展している
ゼブラフィッシュ胚から血球前駆細胞を特異的に取り出すことができるようになったのは重要な成果である。ただし、LSD1複合体を単離するためのトランスジェニック系統の樹立はまだであり、迅速に対応する必要がある。一方、flad1変異系統の開発は貴重な成果で有り、次年度の解析が楽しみである。
LSD1複合体を単離するためのトランスジェニック系統の樹立を急ぎ、樹立できた暁には、L各種血球前駆細胞からのLSD1複合体単離を試みる。具体的には、当初計画の、1)さまざまな血球分化段階のLSD1 複合体を単離できる多重トランスジェニック系統の開発、を行い、その後、2)さまざまな血球分化段階のLSD1 複合体の比較解析、を試みる。一方、初年度に樹立されたflad1変異系統胚を用いて、各種血球マーカーを調べ、FAD合成の減弱が、造血発生にどう影響されるか調べる。これは、当初計画の、3)FAD 量が減弱するゼブラフィッシュ系統の開発、が部分的に達成されたことになり、この系統を用いて、血球分化障害の解析、と、LSD1 の動態、を行う。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (3件)
Neurosci. Res.
巻: 95 ページ: 27-37
10.1016/j.neures.2015.01.005.
Genes Cells
巻: 未定 ページ: 未定