公募研究
研究代表者は、血球分化におけるエピジェネティクス制御の分子機構の研究を行ってきた。その過程で、ヒストン脱メチル化酵素LSD1 が血球分化を促進することをゼブラフィッシュ遺伝学を駆使して発見した。本課題研究では、血球-血管内皮共通前駆細胞から最終分化を遂げた赤血球までの赤血球分化過程において、LSD1 複合体がFAD 結合性を含め、どのように変化し、どのようにエネルギー代謝と関連し、どのようにエピジェネティクス制御が変遷させるかを、明らかにすることを目的とした。血球-血管内皮共通前駆細胞から血球共通前駆細胞への分化は、転写因子Etv2の発現抑制が重要であるが、本年度は、まず、この制御はLSD1がEtv2遺伝子プロモーターのヒストン脱メチル化を介して行われることを明らかにし、学術雑誌に報告した(Takeuchi et al. 2015)。次に、血球共通前駆細胞から赤血球及び骨髄球に分化する段階に関しては、Gata1遺伝子を制御する因子群の遺伝子プロモーターのDNAメチル化が重要なことを浮かび上がらせた。一方、FAD合成酵素であるFlad1変異系統の解析を行ったが、こちらは明快な造血異常は観察されなかった。このことは、エネルギー代謝と造血発生の間には、大きな関連性がない可能性を推測させた。一方、Flad1変異系統では、内胚葉系臓器の発生異常が観察された。興味深いことに、LSD1変異ゼブラフィッシュでも、肝臓・膵臓・肺(魚類では鰾)といった臓器の発生異常が観察され、内胚葉系臓器の発生には、FAD量とLSD1活性の双方が必要である可能性が示された。エネルギー代謝の中軸を担うこうした臓器の発生と、FAD-LSD1軸のエピジェネティクス制御の関係は非常に興味深く、新しい研究の方向性と期待する。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (10件) (うち国際学会 2件、 招待講演 2件) 備考 (1件)
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