本研究は、連続切片の再構築による3次元定量解析法と蛍光イメージング法を用いて、間欠的に分裂増殖する細胞集団と連続して分裂増殖する細胞集団を分離して、その特性を解析するとともに、がん化を誘導することを見出した因子がスフェア内細胞分裂動態に及ぼす作用を明らかにすることを目的とした。 ①スフェア内細胞増殖動態の3次元定量解析。MafKを発現させたHaCaT細胞も、Mock細胞と比較して優位に大きなスフェアを形成することを確認した。また、BrdUの取り込みの3次元定量解析により、スフェア培養は細胞増殖サイクルの速い細胞と遅い細胞が混在する集団であることが示された。 ②スフェア内細胞増殖動態の蛍光ビデオ解析。平面培養では、HaCaT細胞がKi67陽性のまま連続的に細胞分裂を継続するのに対し、スフェア培養では、RFPの蛍光が点滅し、間欠的な細胞増殖を示す細胞が認められた。HaCaT-EGFP:Sall4は、一過性にドーム状の陽性細胞集団と周囲では培養皿に付着して陰性となった細胞の集団を形成したが、蛍光を発する細胞の長期維持が困難であったため、蛍光プローブの改変を試みている。特殊環状ペプチドでは、細胞膜上に発現するGPNMBに特異的に結合する特殊環状ペプチドを作製し、FITCラベルを行って検討した。複数の細胞株でGPNMBは平面培養では細胞表面にほとんど露出されないが、スフェア培養では一部の細胞のみFITC結合ペプチドを盛んに取り込み、分離と2次スフェア形成実験により、GPNMB発現細胞の中にスフェアを形成する幹細胞が含まれることが示唆された。 ③間欠性増殖細胞と連続性増殖細胞の分離と網羅的解析。ki67-turboRFPを用いた増殖期と間期の細胞の分離を試みているが、長期培養中にki67-turboRFPが陰性化する細胞が増えてくることが判明した。
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