研究領域 | 生命素子による転写環境とエネルギー代謝のクロストーク制御 |
研究課題/領域番号 |
26116712
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
豊島 文子 京都大学, ウイルス研究所, 教授 (40397576)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ES細胞 / 転写因子 / 脂肪酸代謝 |
研究実績の概要 |
ES細胞をin vitroで目的の細胞に分化させる手法については、これまで多くの研究がなされ、より効率良く分化させる実験系の確立が模索されてきた。しかしどの分化誘導系でも一部の細胞が未分化状態で残るため、移植後にがん化することが懸念され、臨床応用を考える上で大きな課題となっている。我々は、Oct4-GFPレポーターES細胞を95%以上の高効率で神経細胞に分化させる系を用いて解析した結果、ごく一部の細胞はOct4の発現を維持し、三胚葉分化能を持った未分化状態を保ち続けることが観察された。また、この細胞を単離し分化培地で再度培養すると、増殖能を顕著に低下させた状態で多能性を維持することが分かった。また、マイクロアレイとqPCR解析により、ES細胞と遺伝子発現プロファイルを比較したところ、転写因子FoxO3aが顕著に増加するしていることが分かった。FoxO3aをshRNAでノックダウンすると未分化性の維持が低下する結果が得られている。また、糖代謝系の遺伝子発現が低下し、脂肪酸代謝関連遺伝子の発現上昇が認められた。現在、FoxO3aの発現制御と代謝との関連について解析を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
分化条件下で未分化性を維持するのに必要な転写因子の候補を特定することが出来た。研究の第一目標は到達したといえる。
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今後の研究の推進方策 |
FoxO3aの発現調節には、プロモーター領域のメチル化とアセチル化が大きく影響する。このエピジェネ制御を担う酵素は、NADやヒドロキシ酪酸などの代謝産物をコファクターとすることから、代謝経路の変換がFoxO3aの発現を変化させる可能性が高い。今後は、糖代謝から脂肪酸代謝への変換がFoxO3aの発現変化を誘導する可能性とその作用機序の解明を目指す。
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