研究領域 | 生命素子による転写環境とエネルギー代謝のクロストーク制御 |
研究課題/領域番号 |
26116722
|
研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
尾池 雄一 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 教授 (90312321)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | DNA脱メチル化 / ヒストン修飾 / がん微小環境 |
研究実績の概要 |
我々はこれまでの研究成果として、低酸素や低栄養といったがん微小環境によってヒト骨肉腫細胞株SaOS2におけるDNA脱メチル化関連酵素の発現が誘導されることを明らかにした。平成26年度では、がん微小環境におけるDNA脱メチル化とヒストン修飾パターンの連関を解析する目的で、SaOS2細胞を用いた移植モデルを作製し、移植後5週目の原発巣から単離したがん細胞におけるH3K9me3やH3K27me3の脱メチル化に関わるヒストン脱メチル化酵素の発現解析を行い、低酸素や低栄養といったがん微小環境によって複数のヒストン脱メチル化酵素の発現が誘導されることを見出した。さらに、がん微小環境におけるDNA脱メチル化経路の詳細を解析する目的で、DNA脱メチル化酵素であるTETをノックダウンしたSaOS2細胞を樹立し、移植実験を開始したところである。また、現在、移植前のSaOS2細胞、低酸素・低栄養下で培養したSaOS2細胞、移植後に肺移転したSaOS2細胞のRNAサンプルを用いてRNA-seq解析を実施中である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度では、低酸素や低栄養といったがん微小環境によって、がん細胞におけるH3K9me3やH3K27me3の脱メチル化に関わる複数のヒストン脱メチル化酵素の発現が誘導されることを見出した。また、DNA脱メチル化酵素であるTETをノックダウンしたSaOS2細胞の樹立と移植実験、さらに、移植前のSaOS2細胞、低酸素・低栄養下で培養したSaOS2細胞、移植後に肺移転したSaOS2細胞のRNAサンプルを用いたRNA-seq解析などを実施しており、当初予定していた実験計画を順調に進めることができていると考えられる。
|
今後の研究の推進方策 |
TETをノックダウンしたSaOS2細胞を用いた移植実験において、原発巣における遺伝子発現解析、DNAメチル化レベル解析、がん細胞を移植した個体の生存期間を検討し、がん微小環境におけるTET依存的なDNA脱メチル化経路とがん転移との連関を明らかにする。また、平成26年度において見出した低酸素や低栄養といったがん微小環境によって発現誘導される複数のヒストン脱メチル化酵素とがん細胞における各ヒストン修飾およびDNAメチル化レベルとの連関を解析する。さらに、現在実施しているRNA-seq解析に加え、ゲノムワイドなDNAメチル化レベルの変化を解析し、がん微小環境において脱メチル化が生じるゲノム領域および当該領域の脱メチル化によって発現誘導される標的遺伝子を解明する。同定した遺伝子については、TETノックダウン細胞を用いた移植実験サンプルにおける発現およびDNAメチル化レベル、前述の各ヒストン修飾を検討する。
|