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2014 年度 実績報告書

脂肪滴を介した新たな転写代謝システムの解明

公募研究

研究領域生命素子による転写環境とエネルギー代謝のクロストーク制御
研究課題/領域番号 26116725
研究機関同志社大学

研究代表者

小林 聡  同志社大学, 生命医科学部, 教授 (50292214)

研究期間 (年度) 2014-04-01 – 2016-03-31
キーワード転写制御 / 脂質代謝
研究実績の概要

哺乳類の転写因子Nrf1はタンパク質恒常性維持(Proteostasis)に関わることが明らかにされているが、近年の研究進展により、脂質代謝にも関わることが報告されている。そこで本研究では、Nrf1による脂質代謝調節機構を詳細に解明する目的で、ショウジョウバエのオルソローグ転写因子CncCをモデル系に遺伝学的解析手法を駆使し解析する。
本年度は、まずCncCのアミノ末端に存在するNHB1(N-terminal Homology Box 1)ドメインが、CncCの転写因子としての機能を抑制していることを、ショウジョウバエ遺伝学的手法により明らかにした。NHB1ドメインは、哺乳類オルソローグNrf1やNrf3にも存在し、小胞体にアンカーさせることで核移行を阻害し、転写因子としての機能を抑制していることが分かっている。したがって本研究結果は、NHB1ドメインの抑制機能は進化的に保存されており、その機能的重要性を強く示唆する。
さらにNHB1ドメインを欠失させた恒常的CncC活性化型であるCncCΔN変異体をショウジョウバエの脂肪組織であるfat bodyに過剰発現させると、脂肪滴の形成ならびにトリグリセリド量が低下することを見出した。この結果は、脂質代謝における生理機能が、CncCとNrf1の間でやはり種間保存されていることを示す。したがってNrf1による脂質代謝機構の詳細を解析するために、ショウジョウバエのCncCモデル系を駆使し解析することはきわめて有用であることが示された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

哺乳類の転写因子Nrf1による脂質代謝調節機構を解明する目的で、ショウジョウバエのオルソローグ転写因子CncCをモデル系として利用するという本研究の当初の狙いは達成できた。そのことを示唆するように、CncCがもつNHB1ドメインの抑制機能は、Nrf1においても高く保存されていることがわかったため、脂質代謝の制御機構も保存されている可能性を強く示唆し、解析モデル系として有用性が支持された。

今後の研究の推進方策

ショウジョウバエCncCならびに哺乳類オルソローグNrf1による脂質代謝調節機構の解明において、これら転写因子の活性化機構ならびに活性化シグナル、そして標的遺伝子の同定が、次の重要問題として存在する。これら問題について、今後アプローチしていく。まず活性化機構に関しては、NHB1ドメインを介して小胞体に停留されているCncCあるいはNrf1は、おそらく膜局在形のタンパク質切断酵素により切断されて、小胞体から乖離するものと考えられる。さらに脂質代謝に関わる代謝シグナルがCncCあるいはNrf1の活性化シグナルとして機能し、その代謝シグナルを感知するレセプターが存在し、これもやはり小胞体膜近傍に局在する可能性が高い。このような仮説を立てる参考例としては、ステロール合成を司る転写因子SREBPの制御システムが挙げられる。この分子メカニズムを解明するために、膜タンパク質を単離するプロテオーム解析と一倍体細胞を用いた遺伝学的スクリーニング(Haploid genetic screen)を開始している。これらアプローチから同定された制御因子のさらなる機能解析により、CncCあるいはNrf1による代謝制御を発動させる代謝シグナルを解明する。さらにCncCあるいはNrf1の標的遺伝子をマイクロアレイ解析で同定する。以上の分子機構の解明は、脂質代謝の治療ターゲットとしてNrf1を活用する創薬研究にもきわめて重要な基盤的知見を与えると考える。

  • 研究成果

    (8件)

すべて 2015 2014 その他

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (4件) 図書 (2件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Inhibitory mechanism of FAT4 gene expression in response to actin dynamics during Src-induced carcinogenesis.2015

    • 著者名/発表者名
      Ito, T., Taniguchi, H., Fukagai, K., Okamuro, S. and Kobayashi, A.
    • 雑誌名

      PLOS ONE

      巻: 10 ページ: e0118336

    • DOI

      http://dx.doi.org/10.1371/journal.pone.0118336

    • 査読あり / オープンアクセス / 謝辞記載あり
  • [学会発表] 神経特異的Nrf1KOマウスの神経変性に対する還元型グルタチオン経口投与の効果2015

    • 著者名/発表者名
      久保 花織、谷口 浩章、森田 匡彦、小林 聡
    • 学会等名
      冬の若手ワークショップ2015@伊香保
    • 発表場所
      伊香保
    • 年月日
      2015-02-05 – 2015-02-07
  • [学会発表] Neural stemcell-specific disruption of the transcription factor Nrf1 (NFE2L1) gene leads to aberrant accumulation of phosphorylated α-synuclein in cerebellar Purkinje cells.2014

    • 著者名/発表者名
      Taniguchi, H., Okamuro, S., Miyasaka, T., Kanazawa, Y., Matsumoto, M., Kubo, K., Katahira, T., Motoyama, J., Kobayashi, A.
    • 学会等名
      第37回 日本分子生物学会年会.
    • 発表場所
      横浜
    • 年月日
      2014-11-25 – 2014-11-27
  • [学会発表] USP15 stabilizes and activates the transcription factor Nrf1 by deubiquitination.2014

    • 著者名/発表者名
      Fukagai, K., Taniguchi, H., Natsume, T., Tsuruta, F., Chiba, T., Kobayashi, A.
    • 学会等名
      ZOMESVIII
    • 発表場所
      Xiamen, China
    • 年月日
      2014-11-18 – 2014-11-21
  • [学会発表] Homeostatic maintenance of neuronal activity by the transcription factor Nrf1 (NFE2L1).2014

    • 著者名/発表者名
      Okamuro, S., Taniguchi, H., Kanazawa, Y., Katahira, T., Motoyama, J., Yamamoto, M., Kobayashi, A.
    • 学会等名
      第37回 日本神経科学会
    • 発表場所
      横浜
    • 年月日
      2014-09-11 – 2014-09-13
  • [図書] 南山堂医学大事典2015

    • 著者名/発表者名
      小林聡、他
    • 総ページ数
      1
    • 出版者
      南山堂
  • [図書] プロテアソームリカバリーにおける転写因子Nrf1 (NFE2L1)の遺伝子発現機構2014

    • 著者名/発表者名
      小林聡、土谷佳樹
    • 総ページ数
      4
    • 出版者
      日本生化学会
  • [備考] 同志社大学生命医科学部遺伝情報研究室ホームページ

    • URL

      http://akobayas.wix.com/genetic-code-lab

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公開日: 2016-06-01  

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