研究実績の概要 |
本研究では"光"と"遺伝子"によって細胞機能を制御する光遺伝学(オプトジェネティクス)が創製する新しい転写環境の構築とその作用解析を行った。特に本研究期間では、再生医療や細胞移植療法による細胞・組織の機能代替だけでは不十分であった領域に対して、オプトジェネティクスによる移植細胞の刺激や再生組織機能の改善をめざした。当初は神経生理学分野での発展が期待されたオプトジェネティクスであるが、その後に細胞内シグナル伝達や転写因子発現の光制御も可能となり、様々な疾患や薬剤作用機序の解明に有用であることが本研究期間中に明らかとなった。特に、膵ベータ細胞からのインスリン分泌制御、iPS細胞の神経細胞への分化制御、癌細胞の走化性制御にオプトジェネティクスが適用できたことは新しい発見である。 本研究期間では、膵ベータ細胞へのチャネルロドプシン2(ChR2)発現と光照射の併用により細胞内のCa2+濃度増加、Ca2+/カルモジュリン依存性キナーゼIIδ活性化とグルコース代謝非依存性インスリン分泌量増加を明らかにした(Gene Therapy, 22, 553-559 (2015))。この研究では転写因子PDX(pancreatic and duodenal homeobox gene)-1などの解析をさらに進行中である。 オプトジェネティクスはミリ秒単位で細胞機能を制御できる技術であるため、転写因子発現量も秒単位で変化するが、個別研究では解析できなかった。しかし、本研究領域内での情報交換により、リアルタイムで転写因子発現量のイメージングを行うことができつつある。
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