公募研究
絶食応答は生体に必須のエネルギー代謝の恒常性維持機構であり、カロリー制限によるその適度な亢進により寿命が延長することが知られている。一方、肝臓における糖新生の病的亢進が糖尿病の高血糖を惹起するように、絶食応答の病的亢進は代謝性疾患の病因ともなり得ることから、その分子機構の解明と制御は健康長寿の鍵を握る。我々は転写coregulatorのCITED2が絶食応答遺伝子転写の鍵分子であるPGC-1αを活性化すること、そのメカニズムとしてPGC-1αをアセチル化し不活性化するGCN5の作用をCITED2が阻害することを見出した。本結果よりCITED2を絶食応答の鍵分子と考え、その結合蛋白ならびに制御性蛋白の同定と機能解析を進めている。GCN5はこれまでPGC-1αの不活化因子と考えられていたが、我々の検討から本分子のヒストンアセチル化活性は糖新生酵素の発現誘導に必要不可欠であること、GCN5はCITED2、PKAとともに機能モジュールを形成すること、ここで起こるPKAによるGCN5のリン酸化が転写の活性化に必須であることが明らかとなった。本酵素は絶食時に、CITED2と協調して転写活性化のためのエピゲノム修飾とコアクチベーターの活性化を統合する可能性が示唆された。SetXは、リシンメチル化酵素ドメインであるSETドメインを有し、グルカゴン・CITED2依存的に発現が誘導される。これまでの検討から本分子がメチル化活性を有すること、PGC-1αならびにSIRT1とも相互作用し、これらの酵素活性を調節すること、その機能欠損は肝細胞の糖新生を抑制し、マウス個体レベルの検討からは血糖を低下させることが明らかとなった。SetXはPGC-1α、Sirt1、GCN5などと協調して、絶食応答遺伝子の発現を制御していると考えられる。
2: おおむね順調に進展している
平成26年度に計画していた検討の内、GCN5-CITED複合体によるホルモン応答性糖新生系酵素遺伝子発現調節の分子機構、マウス肝臓における機能欠損/獲得実験によるGCN5 の機能解析については計画以上に実施することができた。また本複合体の標的遺伝子の同定にも着手した。SetXに関してはPGC-1αやSIRT1との相互作用の解析ならびにマウス肝臓における機能解析は予定通り行った。SetXのクロマチン結合領域の決定のためのChIP-Seqに用いる抗体を作成したが良いものが得られず、再度作製を試みている。以上の状況から上記のように自己評価した。
概ね研究計画に則って研究を推進させる。現在作製中の抗SetX抗体が完成しなければ、すでに作製を終えているエピトープタグ付きのSetXを用いて解析を行うので、計画の遂行に支障はない。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (12件) (うち招待講演 6件)
Hepatology
巻: 61 ページ: 1343-1356
10.1002/hep.27619
Diabetes
巻: in press ページ: in press
db141506