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2014 年度 実績報告書

グリア光操作による虚血性脳障害回避法の開発

公募研究

研究領域グリアアセンブリによる脳機能発現の制御と病態
研究課題/領域番号 26117501
研究機関東北大学

研究代表者

松井 広  東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (20435530)

研究期間 (年度) 2014-04-01 – 2016-03-31
キーワード脳・神経 / 脳神経疾患 / 生理学 / 虚血 / グリア細胞
研究実績の概要

脳への酸素と栄養の供給が滞る脳虚血時においては、細胞内アシドーシスや、グルタミン酸過剰放出による興奮性神経毒性が生じ、細胞死を誘導する代謝経路が活性化される。細胞死へと至るシグナル・カスケードの発端となるグルタミン酸の放出を止める手立ては考えられておらず、そもそもどの細胞が主要な放出源であるのかすら特定されていない。本研究では、脳虚血時にグルタミン酸が放出されるメカニズムを明らかにし、細胞内イオン濃度を光操作することで放出そのものを止め、虚血性脳障害を回避させる方法を編み出すことを目指している。
これまでの研究を通して、グリア細胞のうち、アストロサイトに光感受性分子ChR2を発現させた遺伝子改変動物を作製し、アストロサイトを光刺激することでこの細胞を特異的に酸性化させると、それだけが引き金となって、DIDS感受性陰イオンチャンネルが開き、グルタミン酸が放出されることを示した。また、脳虚血にともない、過剰なグルタミン酸が放出され、興奮性神経毒性により、脳細胞死が生じることが知られているが、アストロサイトに光感受性の水素イオンポンプArchTを発現させ、アストロサイト細胞内を光刺激によりアルカリ化すると、過剰なグルタミン酸放出が止まり、虚血性脳障害を防ぐことができることが示された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

脳虚血において障害が生じる最大の鍵となるのが、アストロサイトの酸性化であり、酸性化により、アストロサイト内部からグルタミン酸が放出されることが明らかになったのは、これまでの虚血研究にブレイクスルーをもたらしている。そこで、虚血性脳障害を回避するには、アストロサイトの酸性化を止めるか、アストロサイトからに発現するグルタミン酸透過性の陰イオンチャネルを止めるかのどちらかが重要な治療ターゲットとなりうる。それぞれの創薬探索には、培養系を使うことが有用であると考えられ、現在、光遺伝学ツールを発現したアストロサイトの培養にも取り組んでおり、当初の計画を越えて、トランスレーショナルな研究への道筋も付き始めている。

今後の研究の推進方策

平成27年度の計画としては、虚血状態を模擬したときに、アストロサイト内で、どの程度のpH変化が認められるのかを実測することを目指す。これまでは、pH蛍光指示薬のSNARF-5F-AMを使っていたが、この指示薬はアストロサイトだけではなく、全ての細胞種に導入されてしまうため、細胞種が明らかに同定できる細胞体近傍でのpH変化しか計測することはできなかった。そこで、昨年度は、pH感受性のある蛍光タンパク質を発現する遺伝子改変マウスの作製を行った。現在、繁殖して実験に使用できる状態なので、この動物を用いて、高精度な細胞内pH計測を行いたい。まずは、急性スライス標本を用いて検討を進めるが、光ファイバーを介した生体内でのpH計測にも挑戦する。
虚血等の病態時や神経刺激時におけるアストロサイト内pH変動が明らかになれば、同程度のpH変化によって、どのようなアストロサイト機能が発揮されるのかを調べることができる。また、アストロサイトからのグルタミン酸放出が、専ら細胞内pHに依存することが明らかになれば、細胞内pHを安定化させるための人為的な操作を考案することが可能になる。ArchTによる光遺伝学的操作で、アストロサイトからの放出が止められることは上述した通りだが、臨床的に適用できるような薬剤の中から、pH安定化もしくはアストロサイトからのグルタミン酸放出に関わるDIDS感受性陰イオンチャネルの活動を阻害する作用の探索を検討する。

  • 研究成果

    (13件)

すべて 2015 2014 その他

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (9件) (うち招待講演 7件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Nanoscale distribution of presynaptic Ca2+ channels and its impact on vesicular release during development.2015

    • 著者名/発表者名
      Nakamura Y, Harada H, Kamasawa N, Matsui K, Rothman JS, Shigemoto R, Silver RA, DiGregorio DA, Takahashi T
    • 雑誌名

      Neuron

      巻: 85 ページ: 145-158

    • DOI

      http://dx.doi.org/10.1016/j.neuron.2014.11.019

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] In vivo visualization of subtle, transient, and local activity of astrocytes using an ultrasensitive Ca2+ indicator.2014

    • 著者名/発表者名
      Kanemaru K, Sekiya H, Xu M, Satoh K, Kitajima N, Yoshida K, Okubo Y, Sasaki T, Moritoh S, Hasuwa H, Mimura M, Horikawa K, Matsui K, Nagai T, Iino M, Tanaka KF
    • 雑誌名

      Cell Reports

      巻: 8 ページ: 311-318

    • DOI

      10.1016/j.celrep.2014.05.056

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] 光遺伝学のグリア細胞への応用と新知見2014

    • 著者名/発表者名
      別府 薫、松井 広
    • 雑誌名

      日本臨牀

      巻: 72 ページ: 2243-2249

  • [学会発表] 脳虚血時におけるグリア活動暴走の光遺伝学的制御2015

    • 著者名/発表者名
      松井 広
    • 学会等名
      日本薬理学会
    • 発表場所
      名古屋国際会議場(名古屋市)
    • 年月日
      2015-03-18 – 2015-03-18
  • [学会発表] ポスト神経至上主義:グリア光操作による新たな展開2015

    • 著者名/発表者名
      松井 広
    • 学会等名
      蔵王カンファレンス
    • 発表場所
      蔵王四季のホテル(山形市)
    • 年月日
      2015-01-30 – 2015-01-30
    • 招待講演
  • [学会発表] 「神経」科学からの脱出:グリア光操作技術による統合脳科学への挑戦2014

    • 著者名/発表者名
      松井 広
    • 学会等名
      立命館大学視覚科学統合研究センターセミナー
    • 発表場所
      立命館大学(草津市)
    • 年月日
      2014-12-17 – 2014-12-17
    • 招待講演
  • [学会発表] 光操作でグリア暴走を止める2014

    • 著者名/発表者名
      松井 広
    • 学会等名
      日本レーザー医学会
    • 発表場所
      京王プラザホテル(新宿区)
    • 年月日
      2014-11-30 – 2014-11-30
    • 招待講演
  • [学会発表] Glial glutamate release and its role in neuronal information2014

    • 著者名/発表者名
      Ko Matsui
    • 学会等名
      NIH-Japan-JSPS Symposium
    • 発表場所
      Bethesda, USA
    • 年月日
      2014-10-24 – 2014-10-24
    • 招待講演
  • [学会発表] Glial control of behavior and brain damage2014

    • 著者名/発表者名
      Ko Matsui
    • 学会等名
      Glial Heterogeneity Meeting
    • 発表場所
      Dusseldorf, Germany
    • 年月日
      2014-10-13 – 2014-10-13
    • 招待講演
  • [学会発表] Active role of glia in neuronal circuit modulation and rampant glial signals in pathology2014

    • 著者名/発表者名
      Ko Matsui
    • 学会等名
      CiNet Friday Lunch Seminar
    • 発表場所
      脳情報通信融合研究センター(吹田市)
    • 年月日
      2014-09-26 – 2014-09-26
    • 招待講演
  • [学会発表] 光で操作するグリア細胞活動2014

    • 著者名/発表者名
      松井 広
    • 学会等名
      創薬薬理フォーラム
    • 発表場所
      日本薬学会長井記念館(渋谷区)
    • 年月日
      2014-09-25 – 2014-09-25
    • 招待講演
  • [学会発表] プラトンの洞窟からの脱出:オプトジェネティクスの光と影2014

    • 著者名/発表者名
      松井 広
    • 学会等名
      グリアアセンブリ若手の会
    • 発表場所
      仁和寺(京都市)
    • 年月日
      2014-08-07 – 2014-08-07
  • [備考] 東北大学大学院医学系研究科・脳神経科学コアセンター・新医学領域創生分野

    • URL

      http://www.ims.med.tohoku.ac.jp/matsui/

URL: 

公開日: 2016-06-01  

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