本研究の目的は小胞型Dセリントランスポーター(VDseT)を同定し、VDseTがアストロサイトでDセリンの蓄積と放出に関わることを証明し、VDseTとその他の小胞型伝達物質トランスポーターおよび合成酵素のラセマーゼとの機能連関を解析することである。D-セリンはNMDA受容体の感度を調節する、感度調節型の伝達物質である。アストロサイトでは小胞内に蓄積され、開口放出されるが、その小胞内蓄積を預かるトランスポーターの分子は不明である。 前年度にVDseTの精製タンパク質をリポソームに組み込んで輸送活性測定し、プロトンとの交換輸送によりD-セリンを輸送すること、D-セリンへの基質特異性は高く、その他のアミノ酸は輸送しないことを見いだした。平成27年度はVDseT特異的抗体にて脳における発現を詳細に解析した結果、VDseTが特に海馬CA3領域mossy fiberにてsynaptophysinと共局在することを見いだした。また、D-セリン測定系の構築をすすめ、神経細胞やアストロサイトからのD-セリン放出量の定量的な解析を試みている。
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