公募研究
D-セリンは、神経活動依存的にグリア細胞から放出される代表的なグリオトランスミッターのひとつである。これまで、D-セリンはNMDA受容体のコアゴニストとして作用し、記憶・学習や神経細胞死に関与することが知られている。近年、我々は、小脳プルキンエ細胞に発現するデルタ2型グルタミン酸 (デルタ2) 受容体にD-セリン結合が結合し、運動記憶・学習を調節することを見出した (Kakegawa et al., Nature Neurosci, '11)。そこで本研究では、この新規D-セリンシグナリングの分子機構と機能的役割を明らかにすることを大きな目標としている。デルタ2受容体は、D-セリンだけでなく、自然免疫系補体C1qの機能ドメインである球状C1qドメインを有する分泌性C1qファミリー分子のCbln1にも結合する。興味深いことに、D-セリンはデルタ2受容体のリガンド結合領域に結合するのに対し、Cbln1はデルタ2受容体の最N末端領域に選択的に結合し、デルタ2受容体が発現する小脳平行線維-プルキンエ細胞シナプスの形成・維持機構を制御する (Matsuda et al., Science, '10; Kakegawa et al., J Neurosci, '09)。そこで、今回、デルタ2受容体最N末端領域へのCbln1結合がD-セリン-デルタ2受容体シグナリングを調節しうるかどうかを、デルタ2受容体欠損マウスへの外来性デルタ2受容体遺伝子導入による表現型レスキュー実験をもとに検討した。その結果、Cbln1結合能を欠いた変異型デルタ2受容体は、細胞表面に局在し、D-セリンと結合しうるものの、細胞内D-セリンシグナリングを活性化できず、結果として、シナプス可塑性や協調運動に障害をもたらした。このことから、グリア細胞から放出されるD-セリンとニューロンから分泌されるCbln1が、デルタ2受容体に対して協同的に作用することにより、新規D-セリンシグナリングを精密に調節していることが示唆された。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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Neuron
巻: - ページ: -
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http://www.yuzaki-lab.org/