公募研究
平成26年度は完了した2個の統合失調症のGWASデータセットを用いた解析を行った。その結果、有意なグリア関連遺伝子と統合失調症の確度の高い関連は見いだせていない。最も有意な関連は、Glial Cell Development(GO: 21782)で、P=1E-4である(多重比較を考慮すると有意ではない)。この構成遺伝子は、PHGDH、SOX11、SOX4、LGI4、PICK1であるが、各遺伝子の関連では、SOX4のみが有意であり(P=0.008)、本遺伝子に引っ張られている可能性が示唆された。SOX4はグリア関連遺伝子の中では中核となるものではなく、期待された結果ではないため、今後の追試が必要である。しかし、現在までに3個目のデータセットの実験を完了させた。この最後のデータセットのサンプル数は最大であり(統合失調症2000名vs対象者6700名)、今後、この結果を用いた詳細なグリア関連遺伝子との関連解析を行う。また、向精神薬の作用機序としてグリア遺伝子に影響することが知られている。我々のGWASデータセットでは、統合失調症に対する抗精神病薬反応性の薬理ゲノム学的研究(PGx)を実施した。グリア関連遺伝子との確度の高い関連性は、ここでも見いだせていないが、polygenic modelを利用し、「抗精神病薬反応性と統合失調症疾患感受性」の遺伝的リスクの共通性を検討し、有意な重複を見出した。本結果は、薬剤の作用機序から推定された候補遺伝子(Glia関連遺伝子含む)が、統合失調症のリスク候補遺伝子である間接的なevidenceを示唆するものであり、抗精神病薬のターゲットを遺伝子操作したモデル動物の妥当性に一定の支持を与えるものである。
2: おおむね順調に進展している
抗精神病薬と統合失調症の遺伝的共通性を見出し、グリア関連遺伝子を含む抗精神病薬に影響される遺伝子がSCZの候補遺伝子となりうる間接的なevidenceを見出した。また、基盤となる統合失調症全ゲノムSNP解析を完了させた。
平成26年度に完了させた日本人を対象とした最大規模の統合失調症全ゲノムSNP解析の結果を用い、グリア関連遺伝子と統合失調症の関連性を検討する。また、向精神薬の作用機序としてグリア遺伝子に影響することが知られているが、平成26年度と同様の戦略を用い、双極性障害に対する炭酸リチウムの反応性PGxなど様々な表現型のPGx解析をすすめ、グリア関連遺伝子との関連を検討する。
すべて 2015
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 謝辞記載あり 2件)
J Clin Psychopharmacol
巻: 35(1) ページ: 85-8
10.1097/JCP.0000000000000268
J Hum Genet
巻: in press ページ: in press
10.1038/jhg.2015.21