研究領域 | グリアアセンブリによる脳機能発現の制御と病態 |
研究課題/領域番号 |
26117523
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研究機関 | 独立行政法人国立成育医療研究センター |
研究代表者 |
山内 淳司 独立行政法人国立成育医療研究センター, 薬剤治療研究部, 室長 (20335483)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 脱ミエリンンの改善 / ミエリン形成 / 創薬標的分子 / 治療標的分子 / キナーゼ / 交換因子 / モデル組織 / モデル動物 |
研究実績の概要 |
脳や脊髄などの中枢神経ではオリゴデンドログリア細胞がミエリン膜をつくるが、その形成過程に異常がおき、ミエリン膜形成不全に陥ると、最終的には神経細胞にも変性を生じさせる重篤な疾病が引き起こされる。そのなかにペリチェウス・メルツバッハ病(PMD)がある。しかし、主要な原因が明らかにされたにもかかわらず、今日に至っても、特異的治療薬や治療方法が開発されていない。その最大の理由は治療標的分子が明らかにされていないことである。PMDは遺伝性の疾病であるため、それを根本的に治療することは難しいかもしれない。しかし、病態時に強く活性化される分子または分子経路や一部の異種の異常細胞を阻害できれば病態が改善できるのではないかと考えられる。これらの方法は、外傷性疾患などの治療戦略として用いられているものであるが、一部の遺伝性疾患などでも可能性のある治療戦略であると考えられている。 本研究では、このような考えのもと、PMD治療薬開発を目的とし、その標的分子を明らかにすることを試み、独自のインビトロ髄鞘変性システム(共培養系)を利用して、さまざまなライブラリー(低分子化合物、RNA干渉、表面抗原抗体など)を用いてPMD治療薬の標的候補分子を探索した。その結果、古典的MAPキナーゼ(ERK)が病態再現時に活性化され、インビトロレベルで、それを抑制することで病態が改善することが判明した。現在、PMDモデルマウス(池中一裕教授から譲渡)とオリゴデンドログリア細胞特異的にMAPキナーゼ活性が減弱したマウスを交配することで、PMDモデルマウスの病態が改善するかどうか、動物実験レベル(組織レベル、神経行動レベル、電気生理的レベル)で検証する研究を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)インビトロ共培養系をもちい、より脳組織に近いかたちで2種類以上のグリア細胞と神経細胞の共培養を試み、本研究内容に沿ったグリアアセンブリの役割を解明できる基盤が形成されつつあり(2)インビトロからインビボレベルでの創薬標的分子の評価の移行がなされつつあるため。
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今後の研究の推進方策 |
前年の研究を継続するとともに、ノックダウンマウスの作成を継続するとともに、作出されたものからPMD病態モデルマウス(生理研 池中一裕教授の許可を得て使用)と交配し病態の改善効果があるか評価する。方法としては脳切片を作成し脳梁などのミエリン染色を行うことで、ミエリン形成不全を改善できているか試験する。また、研究が順調に進んだ場合、脱ミエリン現象が高頻度に起きる後期段階で、ローターロッド試験などの行動試験で改善効果が認められるか判断したい。 さらに、欧米の臨床研究で数種類のERK経路阻害剤が、人体に影響はないが目的の薬効も認められなかったとして臨床試験が中止された。そのなかで入手可能な阻害剤の効果を、上述の研究と並行して、このモデルマウスを用いて検討したい。
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