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2014 年度 実績報告書

内部共生による宿主-オルガネラ間の遺伝子発現協調機構の成立

公募研究

研究領域マトリョーシカ型進化原理
研究課題/領域番号 26117707
研究機関千葉大学

研究代表者

華岡 光正  千葉大学, 園芸学研究科, 准教授 (30508122)

研究期間 (年度) 2014-04-01 – 2016-03-31
キーワード細胞内共生 / 葉緑体 / 光応答 / プラスチドシグナル / 遺伝子発現制御
研究実績の概要

葉緑体は原始シアノバクテリアの細胞内共生により誕生したと考えられている。共生関係の成立にあたり、光合成機能を維持し守っていくためには、核と葉緑体間で光に応答した遺伝子発現を協調させることが宿主・共生体の両者にとって必須であったと考えられる。本研究では、内部共生起源に近い葉緑体を持つ原始紅藻シゾンの葉緑体で機能するヒスチジンキナーゼ(HIK)に着目し、葉緑体を中心とした光応答系の分子機構、および葉緑体による宿主遺伝子の調節機構を明らかにすることで、内部共生に基づく植物進化の実体を明確にすることを目的とした。
植物の赤色光受容体フィトクロムのGAFドメインには、発色団として開環テトラピロール化合物であるフィトクロモビリンが結合している。シゾンHIKのGAFドメインにも類似した発色団が結合している可能性を検討するため、シゾン細胞から全タンパク質を抽出してZinc-blot解析を行った結果、開環テトラピロール分子の結合を示す蛍光が得られた。シゾンの代謝系から考察すると、フィコシアノビリン、或いはそれに類似した化合物が発色団として機能している可能性が示唆された。
一方、様々な光条件下でのシゾンの遺伝子発現を調べたところ、光による多くの遺伝子の発現誘導は15~30分程度の短い時間で起こるが、一部の遺伝子については60分以上の長い時間を要することが分かった。この一群の遺伝子の発現はHIKの特異的阻害剤を添加した際にも変化が見られ、さらに赤色光により特異的に発現が誘導されることも示されたことから、HIKは赤色領域の光に応答し活性が調節され、一群のターゲット遺伝子の発現制御に関与することが示唆された。HIKに依存する遺伝子を網羅的に調べたところ、光合成関連遺伝子に加え、ストレス応答に関わる遺伝子も多数同定されたことから、HIKは光に加えて葉緑体内のストレスにも応答する可能性が示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

初年度の研究内容として計画した項目はほぼ終了しており、葉緑体を中心とした光応答システム、および葉緑体による宿主核の遺伝子発現調節メカニズムの解明、さらにそれらを踏まえた共生進化モデルの提案に向けて、順調に研究が進行しているものと考えられる。

今後の研究の推進方策

当初の研究目的・研究計画にしたがって、2年目の研究を進める。現状で大きな問題はないが、HIKの生化学的・分光学的解析は質の高いタンパク質の確保が必須であるため、集中的に取り組む。当初の計画に従いつつ、それらを上回る成果を挙げられるよう、効率的かつ効果的な研究推進に努める。

  • 研究成果

    (9件)

すべて 2015 2014

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (6件) (うち招待講演 1件)

  • [雑誌論文] The circadian regulation of photosynthesis2014

    • 著者名/発表者名
      Antony N. Dodd, Jelena Kusakina, Anthony Hall, Peter D. Gould and Mitsumasa Hanaoka
    • 雑誌名

      Photosynthesis Research

      巻: 119 ページ: 181-190

    • DOI

      10.1007/s11120-013-9811-8

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Sense transgene-induced post-transcriptional gene silencing in tobacco compromises the splicing of endogenous counterpart genes2014

    • 著者名/発表者名
      Mi-Rae Shin, Masaya Natsuume, Takashi Matsumoto, Mitsumasa Hanaoka, Misaki Imaoka, Ken Iijima, Shin-ichiro Oka, Eri Adachi and Hiroaki Kodama
    • 雑誌名

      PLoS One

      巻: 9 ページ: e87869

    • DOI

      10.1371/journal.pone.0087869

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Overproduction of stromal ferredoxin:NADPH oxidoreductase in H2O2-accumulating Brassica napus leaf protoplasts2014

    • 著者名/発表者名
      Rajesh Tewari, Mamoru Satoh, Sayaka Kado, Kohei Mishina, Misato Anma, Kazuhiko Enami, Mitsumasa Hanaoka and Masami Watanabe
    • 雑誌名

      Plant Molecular Biology

      巻: 86 ページ: 627-639

    • DOI

      10.1007/s11103-014-0252-3

    • 査読あり
  • [学会発表] Functional analysis of ABA in red algae2015

    • 著者名/発表者名
      Yuki Kobayashi, Hiroyuki Ando, Mitsumasa Hanaoka and Kan Tanaka
    • 学会等名
      第56回日本植物生理学会年会
    • 発表場所
      東京農業大学(東京都世田谷区)
    • 年月日
      2015-03-16
  • [学会発表] 単細胞紅藻シゾンにおける葉緑体に依存した核遺伝子の光誘導転写制御2015

    • 著者名/発表者名
      大原ひかる、安藤洸幸、小倉駿佑、藤井岳、今村壮輔、田中寛、恵良厚子、宮城島進也、五十嵐雅之、内海龍太郎、華岡光正
    • 学会等名
      第56回日本植物生理学会年会
    • 発表場所
      東京農業大学(東京都世田谷区)
    • 年月日
      2015-03-16
  • [学会発表] Light sensing in chloroplasts2015

    • 著者名/発表者名
      Mitsumasa Hanaoka
    • 学会等名
      Tokyo Tech-HHU Dusseldorf Joint Symposium on Photosynthesis as a New Chemical Resource
    • 発表場所
      東京工業大学(東京都港区)
    • 年月日
      2015-03-05
    • 招待講演
  • [学会発表] Redox status regulates chloroplast transcription in the red algae Cyanidioschyzon merolae.2015

    • 著者名/発表者名
      Gaku Fujii, Sousuke Imamura, Keisuke Tarohara, Keisuke Yoshida, Toru Hisabori, Mitsumasa Hanaoka and Kan Tanaka
    • 学会等名
      Tokyo Tech-HHU Dusseldorf Joint Symposium on Photosynthesis as a New Chemical Resource
    • 発表場所
      東京工業大学(東京都港区)
    • 年月日
      2015-03-04
  • [学会発表] 単細胞紅藻シゾンにおけるプラスチドシグナルを介した核遺伝子の転写制御2014

    • 著者名/発表者名
      安藤洸幸、大原ひかる、小倉駿佑、藤井岳、今村壮輔、田中寛、恵良厚子、宮城島進也、五十嵐雅之、内海龍太郎、華岡光正
    • 学会等名
      第37回日本分子生物学会年会
    • 発表場所
      パシフィコ横浜(神奈川県横浜市)
    • 年月日
      2014-11-27
  • [学会発表] 単細胞紅藻シゾンにおける葉緑体に依存した光応答転写制御2014

    • 著者名/発表者名
      安藤洸幸、小倉駿佑、大原ひかる、藤井岳、今村壮輔、田中寛、五十嵐雅之、内海龍太郎、華岡光正
    • 学会等名
      日本植物学会第78回大会
    • 発表場所
      明治大学(神奈川県川崎市)
    • 年月日
      2014-09-13

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公開日: 2016-06-01  

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