公募研究
トキソプラズマは寄生虫の一種です。ヒトには主にトキソプラズマが感染している肉を加熱不十分で食することによって感染し、エイズや抗癌剤治療下にある免疫不全患者に致死性の脳症や心筋炎を引き起こす他、妊婦が初感染すると流産または新生児の先天性疾患の原因になり、わが国でも症例数が増加しています。トキソプラズマに対してわれわれ宿主はインターフェロン ガンマに依存した免疫反応を起こし対抗しますが、その免疫反応がどのように抑制(ブレーキ)されているのかについては全く不明でした。本研究で、①インターフェロン ガンマによって誘導されるトキソプラズマを破壊する免疫反応が、宿主からRabGDIαを取り除くことによって著しく増強され、その結果、トキソプラズマ原虫数が少なくなること、②高力価トキソプラズマ感染でも、RabGDIα欠損マウスは生存率が高く、致死的な脳症の程度が軽いこと、③RabGDIαに存在する脂質結合ポケット(タンパク質の「穴」)が、そのブレーキ機能に必須であることを示しました。本研究成果は、RabGDIαの機能を阻害することによってトキソプラズマに対する免疫機能が大幅に増強し、トキソプラズマ脳症の重症度が改善されたことから、近年我が国においても症例報告が急増しているトキソプラズマ症に対して、RabGDIαという新たな分子を標的とした新規治療戦略を提供できるものとして大いに期待できます。本研究成果は、米国の科学雑誌 『Proceedings of the National Academy of Science of the USA (PNAS)』に掲載されました。
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Proc Natl Acad Sci U S A.
巻: 112 ページ: E4581 E4590
doi: 10.1073/pnas.1510031112.