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2014 年度 実績報告書

核-ミトコンドリア間コミュニケーションによる代謝相互作用の分子機構の解明

公募研究

研究領域マトリョーシカ型進化原理
研究課題/領域番号 26117726
研究機関慶應義塾大学

研究代表者

山本 雄広  慶應義塾大学, 医学部, 講師 (50383774)

研究期間 (年度) 2014-04-01 – 2016-03-31
キーワードエネルギー代謝 / 翻訳後修飾 / ミトコンドリア / 解糖系
研究実績の概要

(1)分化状態によってエネルギー代謝様式が異なることがわかっている、マクロファージの分化実験をおこなった。炎症性マクロファージでは核内に限局した解糖系酵素群のアルギニンメチル化が認められ、解糖系が亢進するのと同時に、ミトコンドリアの断片化が認められた。それに対し、組織修復型マクロファージでは融合した長いミトコンドリアが観察され、TCA回路の代謝産物量が対照群と比較して増加していた。そこで、ミトコンドリア分裂因子Drp1に着目し、発現量を操作することで解糖系の代謝産物量を比較したところ、過剰発現株(断片化)では解糖系の亢進が認められたが、shRNAによる機能阻害株(融合化)では解糖系代謝産物量が軒並み低下することが明らかとなり、ミトコンドリアの形態が解糖系の活性化を規定する要因であることが示された。

(2)細胞内のメチオニン代謝活性を低下させるため、メチオニンおよびコリンを欠乏させた培地中を用いたところ、解糖系酵素群のアルギニンメチル化レベルの低下を誘導することができた。興味深いことにメチオニン代謝変動がチューブリンの修飾動態に影響を与えることを見出した。この現象は含硫アミノ酸代謝酵素シスタチオニンβ合成酵素CBSおよびアルギニンメチル化酵素PRMT1のノックダウン株においても同様に観察された。このことから、チューブリンは従来報告されていない、メチオニン代謝を介した翻訳後修飾を受ける可能性が考えられる。また、細胞をCCCP処理し、ミトコンドリアの機能を低下させた場合、チューブリンの修飾が変化すると同時に解糖系酵素群のアルギニンメチル化を活性化することが明らかとなった。これらの実験結果から、ミトコンドリアの活性化状態がチューブリンの修飾動態を変化させ、アルギニンメチル化を介した解糖系を活性化するトリガーとなることが考えられる。これらの詳細な機構については来年度に行なう。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

今年度は主にミトコンドリアの形態制御と解糖系との関連を代謝解析技術を用いて解析した。その結果、がん細胞では細胞質でのメチオニン代謝制御が核内における解糖系酵素の修飾動態に影響し、エネルギー代謝制御に影響することが明らかになった。また、マクロファージ分化系を用いた予備実験ではミトコンドリア形態、チューブリン修飾動態、エネルギー代謝制御のクロストークが観察しやすい良好なモデルであることがわかり、各種解析ツールの構築もほぼ終了した。これらを用いることでオルガネラ間の代謝連携を人為的に制御し、最終年度での研究計画の遂行が支障なく行なえるものと考える。

今後の研究の推進方策

解糖系酵素のメチル化修飾の有無が細胞全体のエネルギー代謝を制御する上で重要なファクターであることは今年度の研究で明らかになったが、その過程においてチューブリンの修飾動態がメチオニン代謝制御によっても変化し得ることを偶然発見した。来年度は、提案研究に加え、チューブリンの新規修飾の可能性を検討し、複数の修飾間によるクロストークについて詳細な検討を行なうことでオルガネラ間の代謝連携機構の解析を行なう。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2015 2014 その他

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (3件) 図書 (1件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Impacts of CD44 knockdown in cancer cells on tumor and host metabolic systems revealed by quantitative imaging mass spectrometry.2015

    • 著者名/発表者名
      Ohmura M, Hishiki T, Yamamoto T, Nakanishi T, Kubo A, Tsuchihashi K, Tamada M, Toue S, Kabe Y, Saya H, and Suematsu M
    • 雑誌名

      Nitric Oxide

      巻: 46 ページ: 102-113

    • DOI

      10.1016/j.niox.2014.11.005

    • 査読あり
  • [雑誌論文] メチオニン代謝の変動ががんの代謝を決める~アルギニンメチル化修飾によるがん細胞の糖代謝制御2014

    • 著者名/発表者名
      山本雄広、高野直治、石渡恭子、末松 誠
    • 雑誌名

      実験医学

      巻: 32 ページ: 78-85

  • [学会発表] アルギニンメチル化修飾が制御するがん細胞の代謝2014

    • 著者名/発表者名
      山本雄広、高野直治、石渡恭子、末松誠
    • 学会等名
      第37回日本分子生物学会
    • 発表場所
      横浜市
    • 年月日
      2014-11-26 – 2014-11-26
  • [学会発表] 解糖系酵素PFKFB3のメチル化修飾によるがん細胞の糖代謝制御2014

    • 著者名/発表者名
      山本雄広、高野直治、石渡恭子、大村光代、長畑善子、松浦友美、久保亜希子、菱木貴子、末松誠
    • 学会等名
      第87回日本生化学会
    • 発表場所
      京都市
    • 年月日
      2014-10-16 – 2014-10-16
  • [学会発表] ミトコンドリアの形態変化による細胞内エネルギー代謝調節機構の解明2014

    • 著者名/発表者名
      山本雄広
    • 学会等名
      第3回マトリョーシカ型生物学研究会
    • 発表場所
      神戸市
    • 年月日
      2014-07-11 – 2014-07-13
  • [図書] 酸化ストレスの医学2014

    • 著者名/発表者名
      末松 誠、山本雄広、梶村眞弓
    • 総ページ数
      8
    • 出版者
      診断と治療社
  • [備考] 慶應義塾大学医学部医化学教室ホームページ

    • URL

      http://www.gasbiology.com/

URL: 

公開日: 2016-06-01  

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