公募研究
本年度は、予定していた全ゲノム規模での遺伝子発現解析、および分子系統からの進化研究をほぼ完成させることができた。まず、RNAseqデータの元データから高品質配列のみを取り出すフィルダリングを改善し、これまでよりも精度の大幅に向上したマッピング(ゲノム配列との参照、位置同定)データを得ることができた。そこから遺伝子の環境変動(温度、光)に対する発現変動パターンを、共生状態および白化(非共生)状態のセイタカイソギンチャクにおける解析したところ、温度環境などの変化によって発現変動が見られる遺伝子群は、共生の有無によって大きく異なっていたことから、褐虫藻との細胞内共生が宿主刺胞動物の遺伝子発現ネットワークそのものに大きな影響を与えることが示された。この結果は古典的な共生観を覆し、共生現象を理解する上で新規の知見を提供する重要な貢献を果たしたと言える。また、共生成立に重要な役割を持つと考えられている食作用に関わる遺伝子ファミリーの中で、共生状態および白化状態では、同じファミリーに属する別々の遺伝子が発現変動を示すことがわかった。このことは、共生体の有無により遺伝子発現のレパートリーが変化しても、同じような機能を持つ別の相同遺伝子の発現を調節することで、細胞全体としての遺伝子機能は保持されることを示唆している。細胞構造学的な解析についても、褐虫藻と刺胞動物との共生系だけでなく、同じく食作用構造の顕著な緑藻類においても、免疫染色、外来遺伝子発現、蛍光プローブ追跡観察などの手法を検討・開発し、解析を進めることができた。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2015
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件)
MBio
巻: 6 ページ: e01498-15
doi:10.1128/mBio.01498-15
光合成研究
巻: 25 ページ: 100-105