公募研究
本研究ではホソヘリカメムシ-Burkholderiaモデル共生系を対象に、共生器官の大規模トランスクリプトーム解析およびRNAiスクリーニング、発現遺伝子の機能解析を行い、共生成立に関わる宿主昆虫側の分子基盤を網羅的に明らかにすることを目的とする。本年は、(1)共生器官のトランスクリプトームデータの精査による共生関連遺伝子の発現パターン解明、(2)in vivoおよびin vitroにおける共生細菌の形態変化と遺伝子発現変化の調査、(3)共生関連タンパク質のRNAiを行った。(1)については共生細菌が感染する過程で発現変動する遺伝子についてRNAseqを用いて網羅的に明らかにし、90種類以上のシステインリッチタンパク質が共生細菌の定着に伴って大きく発現亢進することが明らかとなった。これらシステインリッチタンパク質はディフェンシン様の構造をしていることから、それら抗菌ペプチドのように細菌細胞に直接作用する可能性が示唆された。そこで、それらタンパク質の機能を解析する前提として、(2)共生細菌が共生時にどのような変化を起こすのか調査を行った。その結果、共生細菌は宿主への感染に伴って細胞形態が小型化し、DNA量が減少し、細胞分裂関連の遺伝子が活性化されることが明らかとなった。これら形態変化や分裂活性化の意義についてはまだ不明であるが、システインリッチタンパク質遺伝子のRNAiがin vivoの共生細菌に及ぼす影響を検証する際に重要な情報になる。そこで、(3)1で明らかになったタンパク質のうち特に発現量の高い4つの遺伝子を対象にRNAiを行ったところ、遺伝子発現の抑制が確認されRNAiが高効率で作用していることが確認できたが、共生細菌の形態やDNA量への影響は確認することができなかった。上述のようにシステインリッチタンパク質は90種類以上が知られているため、各タンパク質間で補償が行われている可能性が考えられる。
2: おおむね順調に進展している
本研究の目的は昆虫-細菌共生系に関わる宿主昆虫側の分子基盤について、トランスクリプトーム解析およびRNAiによって網羅的に明らかにすることを目的としている。今年度はRNAiや菌体観察を詳細に行い、共生器官内で菌体にどのような変化が起き、その変化をどのような宿主側の遺伝子が引き起こしているのかについて結果を得ることができた。これにより、宿主側の遺伝子の機能に関しては来年度へ向けて課題も明確になった。加えて、論文発表・学会発表もコンスタントに行っている。
これまでの研究により共生器官で特異的かつ高発現する遺伝子としてシステインリッチタンパク質を発見し、解析を進めている。1種類のシステインリッチタンパク質の発現をRNAiで抑制しただけでは明確な効果が見られなかったことから、多種類の遺伝子を一度にターゲットにするカクテルRNAiを試みる。また、その他の共生関連遺伝子候補についても同様に解析を進める。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (8件) (うち査読あり 8件、 オープンアクセス 7件、 謝辞記載あり 4件) 学会発表 (5件) (うち招待講演 2件)
Environmental Microbiology Reports
巻: 7 ページ: 282-287
10.1111/1758-2229.12243
Zoological Letters
巻: 1 ページ: 5
10.1186/s40851-014-0009-5
Microbes and Environments
巻: 30 ページ: 29-36
10.1264/jsme2.ME14124
巻: 29 ページ: 434-437
10.1264/jsme2.ME14122
Genome Announcements
巻: 2 ページ: e00556-14
10.1128/genomeA.00556-14
Applied and Environmental Microbiology
巻: 80 ページ: 5974-5983
10.1128/AEM.01087-14
Frontiers in Microbiology
巻: 5 ページ: 457
10.3389/fmicb.2014.00457
Molecular Ecology
巻: 23 ページ: 1445-1456
10.1111/mec.12479