研究領域 | マトリョーシカ型進化原理 |
研究課題/領域番号 |
26117733
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研究機関 | 独立行政法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
今井 賢一郎 独立行政法人産業技術総合研究所, 創薬基盤研究部門, 研究員 (80442573)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ミトコンドリア / ミトコンドリア関連オルガネラ / タンパク質輸送 / 品質管理 / 進化解析 |
研究実績の概要 |
本研究は、高感度オルソログ検索手法を中心とした配列解析手法をもとに、ミトコンドリア及びミトコンドリア関連オルガネラ(MRO)を持つ生物種がミトコンドリアの品質管理関連因子をどれほど維持しているかを調べ、ミトコンドリア品質管理機構の進化及びMROの品質管理機構を明らかにすること目的としている。そこで、本年度は、品質管理機構として、タンパク質輸送機構に注目し、文献調査を行い、ヒト、酵母、シロイヌナズナのタンパク質輸送機構を制御する因子のリストを作成した。また、輸送機構の解析に用いるため、最高精度でミトコンドリアターゲティングシグナル(MTS)を予測できる手法MitoFatesを完成させ、Mol. Cell. Proteomics誌にて発表した。この予測手法は、ウェブサーバとして公開した(http://mitf.cbrc.jp/MitoFates/)。また、ミトコンドリア及びMROを持つ56生物種について、先行研究と矛盾のないの系統樹を作成することもできたので、今後は、56生物種に対し、高感度のオルソログ検索手法による輸送機構制御因子群の有無による系統プロファイル解析及びMTS予測を行い、ミトコンドリア及びMROを持つ生物種の輸送機構の進化解析を行う予定である。 また、一方で、MROを持つ生物種として、赤痢アメーバに注目し、独自に開発したβ型膜タンパク質予測手法により、新規β型膜タンパク質候補を発見した。そこで、国立感染症研究所との共同研究を行い、MROに局在する新規のβ型外膜タンパク質であることが実験的に確認された。この成果は、Sci. Rep誌にて発表した。この新規β型外膜タンパク質は、Entamoeba特有のタンパク質であり、このタンパク質のさらなる解析は、Entamoebaが独自に獲得した品質管理機構の解明につながると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、品質管理機構として、分裂、融合、マイトファジー、タンパク質の輸送機構、カルジオリピンの合成経路に注目しているが、本年度は、特にタンパク質の輸送機構に注力して研究を行うことにした。これまで、最新の研究成果に基づく、ヒト、酵母、シロイヌナズナのタンパク質輸送機構を制御する因子のリストアップ、MTS予測手法の開発、解析対象となるミトコンドリア及びMROを持つ56生物種の系統樹の作成を完了することができ、ミトコンドリア及びMROを持つ生物種におけるタンパク質輸送機構の進化解析を行うための準備が整った。このうち、開発したMTS予測は、誌上発表することができた。酵母のタンパク質輸送制御因子群については、56生物種に対するオルソログ探索も進んでおり、大部分が完了している。また、Entamoebaの品質管理機構の解明の手がかりとなる新規のβ型外膜タンパク質を赤痢アメーバのMROに発見することができた。この成果も誌上発表することができた。以上のように、ミトコンドリア及びMROを持つ生物種におけるタンパク質輸送機構の進化解析を行うための準備も整い、一部の成果については論文発表も行っているので、研究は順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、引き続き、ミトコンドリア及びMROへのタンパク質輸送機構を中心に解析を行う。以下の課程に沿って、ミトコンドリア及びMROのタンパク質輸送機構の進化解析を行う。まず、ミトコンドリア及びMROを持つ56生物種に対し、前年度に作成したヒト、酵母、シロイヌナズナの輸送機構制御因子群の高感度オルソログ検索を完了させる。そして、輸送機構制御因子のオルソログの有無により系統プロファイルを作成する。次に、前年度に開発したMTS予測手法を用い、MTSの予測を56生物種に対して行う。得られたMTS予測結果と系統プロファイルを組み合わせて解析を行うことで、ミトコンドリア及びMROを持つ生物種の輸送機構の進化解析を行う。また、ヒト及び酵母のミトコンドリアプロテオームをクエリとしたホモログ探索を他の生物種にも行い系統プロファイルを作成する。そして、系統関係上でミトコンドリアタンパク質及びMTSの獲得と欠失を類推する手法を開発し、MTSを持つミトコンドリアタンパク質の進化についても解析を行う。MROを持つ生物種では、多くの輸送機構に関わる因子が失われている可能性が高い。そこで、輸送機構制御因子が失われている生物種に関しては、これまで開発したミトコンドリアのα型内膜タンパク質とβ型外膜タンパク質を予測する手法をもとに、プロテオーム解析を行い、新規因子の探索を行う。新規因子候補が見つかった場合は、共同研究を行い実験的な確認を行う。
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