本研究は、ミトコンドリア及びミトコンドリア関連オルガネラ(MRO)を持つ生物種がミトコンドリア品質管理関連因子をどれほど維持しているかを調べ、ミトコンドリアの品質管理機構の進化及びMROの品質管理機構を明らかにすること目的としている。まず、開発した膜タンパク質予測法を用いたMROの品質管理機構の新規因子候補探索と共同研究による実験的検証によって、赤痢アメーバのMROや小胞体局在するに系統特異的膜タンパク質を発見することができた。これらの機能と品質管理機構との関連性についてはさらなる解析が必要である。また、ミトコンドリア及びMROのタンパク質輸送複合体(TOM複合体、TIM23複合体)の進化解析についても成果が得られた。真核生物54種に対するタンパク質輸送複合体のサブユニットの精密なオルソログ解析を行い、Last eukaryotic common ancestor (LECA)におけるTOM、TIM複合体の原始モデルを推定した。このモデルをベースに系統解析、祖先配列推定、構造予測、プレ配列欠損/獲得推定などを用い、TOM、TIM23複合体、プレ配列を持つ遺伝子の進化解析を行ったところ、 (i) TOM複合体のチャネルであるTom40の内孔におけるタンパク質輸送に関わる負電荷パッチや疎水性パッチは、LECAの時点で存在しており、タンパク質輸送の基本的なメカニズムはすでにLECAの時点で確立していた可能性があること、(ii) KinetoplastidsのTIM23複合体では、プレ配列のレセプタとなるTim50は、一度、欠損したが、その後、同じフォールドを持つ別のタンパク質ファミリーからマイグレーションにより代わりの遺伝子を獲得していること、(iii) 輸送複合体の進化は、プレ配列を用いた輸送機構を維持するかどうかが束縛条件となっていることがわかった。
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