本年度は共感に関する実証的(心理学的・神経科学的)研究をレビューするとともに,哲学的・倫理学的研究のレビューも行い,お互いに対する含意を検討した.結果,現在主流の実証的研究を踏まえる限り,近年主流となっている共感の倫理学的・哲学的研究の維持はやはり困難であることが明確になった.他方,より古くからの哲学的・倫理学的研究で対象となっていた共感概念などに関しては,近年の実証研究であまり考察の対象となっておらず,その点を今後実証的研究で考察していく必要があると論じた.この考察の成果については,心理学研究に論文を投稿し,すでに受理・出版されている.
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