研究領域 | 共感性の進化・神経基盤 |
研究課題/領域番号 |
26118508
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
中村 和弘 京都大学, 生命科学系キャリアパス形成ユニット, 准教授 (00548521)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | オキシトシン / 光遺伝学 / ウイルス / 神経回路 / 自律神経 / 体温調節 / 共感性 / 情動 |
研究実績の概要 |
研究代表者は、視床下部のオキシトシンニューロンが情動関連領域である大脳辺縁系だけでなく、自律神経制御に関わる視床下部や延髄へも軸索を投射することに着目し、こうした神経投射を介して共感や母性が生み出され、それに付随する自律生理反応が発現するのではないかという仮説を立てた。この仮説を検証するために、研究代表者はオキシトシンニューロン特異的に任意のリポーター遺伝子を高発現させるOXY-Tet virusを新規に作製した。今年度は、OXY-Tet virusを用いてラット視床下部オキシトシンニューロン特異的に光感受性チャネルを発現させ、オキシトシンニューロンが投射する脳領域のうち、延髄腹側部でのオキシトシン神経終末の活動をin vivoで光刺激することによって生じる自律生理反応を解析した。その結果、視床下部から延髄へのオキシトシンニューロンの活性化が自律神経反応を惹起することがわかった。今後、この手法を駆使することで、オキシトシンニューロンから各脳領域への神経投射が担う生理機能を特定し、その機能発現メカニズムを解明する。本研究成果は、自閉症の改善などを期待したオキシトシンの医療応用にもつながるものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
OXY-Tet virusを用いて蛍光蛋白質をオキシトシンニューロン特異的に発現させることには成功していたことから、このウイルス発現システムを用いて光感受性チャネルをオキシトシンニューロン特異的に発現させることは容易いものと考えられた。しかし、実際に行ってみると、光感受性チャネルの場合は異所性発現が多く生じ、光刺激のin vivo生理実験に用いることができるものではなかった。そこで時間がかかったものの、発現システムに工夫を施すことで光感受性チャネルをオキシトシンニューロン特異的に発現させることにようやく成功した。そして、この発現系を用いて、当初の計画通り、視床下部から延髄へのオキシトシンニューロンを特異的に光活性化することに成功し、自律神経反応を惹起することを明らかにした。こうした進捗状況から、本研究はおおむね順調に進展していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
今年度成功したオキシトシンニューロン特異的な光感受性チャネルの発現システムは、オキシトシン研究に幅広く用いることができる有用なツールであることから、次年度は実験例を重ね、まずは速やかに論文として報告することを目指す。また、このOXT-Tet virusを用いて、オキシトシンが関与する情動行動の発現メカニズムを明らかにするための行動実験も開始する。
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