公募研究
本研究では、向社会行動(利他行動)の生後発達の神経機構を明らかにするために、非ヒト霊長類であるコモンマーモセットを用いて脳内ペプチドおよびモノアミン神経伝達に関連する遺伝子検索および脳機能イメージングを行う。平成26年度は、以下の項目で実験を実施した。1.向社会行動の定量的評価これまで、コモンマーモセットの向社会行動の一指標として、二分室に分かれたボックス内におけるトレー引きによる報酬課題を行ってきた。このテスト法は検査者が立ち会うことが必須であったが、幼少時の養育環境(人工補育/親哺育)や6月齢以降の社会的環境(集団飼育/個別飼育)を操作した個体を調査するにあたり、検査者が飼育者でもある場合、検査者によって行動が影響されることが判明した。そのため、完全自動化した課題装置の開発に取り組んだ。新しい課題装置は、レバー入力すると報酬皿がモーターによって近づくようプログラム制御されている。また、課題ボックスへのスムーズな個体の移動のため、移動ボックスと課題ボックスを同一にしてボックストレーニングを開始した。ボックストレーニングおよび実験室への馴化までに、養育環境の違いは認められていない。2.遺伝子型解析体毛から得られるDNAサンプルを採取し、脳内ペプチドおよびモノアミン神経伝達に関連する遺伝子多型について調査した。その結果、オピオイドμ受容体エキソン領域にアミノ酸置換を伴う一塩基多型の存在が明らかとなり、多型頻度のばらつきもみられた。一塩基多型と行動指標との関連については、現在まで親として仔をcarryingしている期間を養育態度の一指標としてその関連性を調査したが、明らかな関連性は認められなかった。今後、性格判定や向社会行動指標を用いて、関連性を探るほか、オピオイドμ受容体特異的PETトレーサーを用いたPETさらにfMRIイメージングを行う予定である。
2: おおむね順調に進展している
向社会行動評価にあたって、遺伝・環境―脳機能―行動関連を系統的に調査するには行動課題の完全自動化が必須である。行動課題装置を新規開発したことにより、現在当該装置によってテストを開始できる段階にある。また、環境要因の異なるコモンマーモセットを作出し、オピオイドμ受容体の遺伝子多型を見出したことで、行動指標との関連性を調査する基盤を整えることができた。
環境要因の異なるコモンマーモセットは、新規開発した課題装置を用いた行動評価と同時に遺伝子多型検索およびPETイメージングを行い、同一個体における複数のモダリティーデータからその関連性解析を進める。また、行動評価中の自律神経系指標としてオンライン血圧測定を行う。コモンマーモセットの機能的神経ネットワークの同定には、fMRI撮像のため詳細な条件検討を進める必要があるため、これは行動評価、遺伝子検索およびPET解析と並行して推進していく予定である。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (5件)
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