他者の痛み体験を目撃すると観察者に共感が生じる。共感は援助などの向社会行動への動機づけとなるが、同時に不快感や危機察知などの負の誘発性も持っている。つまり、共感は接近と回避の両価性を持ち、その葛藤の結果、社会行動の選択が行われている可能性がある。共感の両価性が社会行動選択に及ぼす影響とその脳内機構は未知である。また、これまでの研究で、ヒトの共感に関わる脳機能が示されている一方で、脳機能の背景にある神経伝達物質(特に、報酬や行動制御に関わるドーパミン)の役割についての理解はほとんど進んでいない。本研究は、共感の両価性についての脳内メカニズムを明らかにすることを目的に、当該年度は、共感誘発課題を作成し、行動データとfMRIデータ取得を開始した。実験条件に応じて他者の心的痛みに対する共感判断が異なり、さらに、個人差が大きい結果を得た。
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