研究実績の概要 |
我々は複数の「自己」を持ち(例:研究者の私と家庭人としての私)それらの間の葛藤を経験する。さらにこれらの「個別的自己」を俯瞰的に眺める「総合的自己」も存在し、適応的に個別的自己間のバランスを調整する。思春期・青年期の“自己の確立”は、個別的自己の成熟を経て、その間の葛藤を調整する総合的自己の確立までの過程である。代表者は様々な自己に関する脳機能マッピング研究の成果に基づいて、行動出力とフィードバック入力の連合(「スキーマ」)が環境とのインタラクションの中で3階層に発達する、すなわち第1層の身体的自己(運動・感覚連合野)から第2層の対人関係的自己(dMPFC, TPJ他)を経て第3層の社会価値的自己(vMPFC, PCC)に至るモデルを提案していた。本研究では、自己確立の最終成熟段階である「総合的自己」の確立までの過程を複数のfMRI実験によってこのモデルに位置づけることを目指し、平成27年度は(1)第1層から第2層への発達過程の解明、(2)第2層から第3層への発達過程の解明、そして(3)個別的・総合的自己の神経基盤解明を行った。その結果、個別的自己の成熟を経て総合的自己が確立する過程は自己3層モデルと整合的であることが示された。さらに、その構成要素であるSMA, dMPFC, vMPFCといった前頭葉内側領域や、TPJ, PCCといった後部連合皮質について、自己確立過程で果たす役割がより具体的に理解できた。
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