研究領域 | 精神機能の自己制御理解にもとづく思春期の人間形成支援学 |
研究課題/領域番号 |
26118704
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
金生 由紀子 東京大学, 医学部附属病院, 准教授 (00233916)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | チック / トゥレット症候群 / 予後予測 / 感覚現象 / 強迫症状 / 自己制御 |
研究実績の概要 |
運動チックと音声チックを有する慢性チック障害であるトゥレット症候群(Tourette syndrome: TS)では、思春期がチックの最悪時である場合が多いが、成人期でも重症なチックが続く者が約2割いる。チックの軽快と自己制御の発達は時期的に重なり、チックの予後予測要因の解明は、自己制御理解上も有意義と考える。 今年度は、予後予測要因を横断研究及び後方視的研究で検討した。 横断的研究では、2004~2011年に受診したTS患者191名(平均14.9歳)を対象に、発症時・初診時・評価時・全経過中のチックの種類、最悪時・評価時のチックの重症度(Shapiro Tourette Syndrome Severity Scale: STSSS)等の臨床症状を評価したデータを解析した。評価時年齢が15歳以下と16歳以上の2群を比べると、16歳以上群でチックの最悪時年齢が有意に高かった。発症時に運動チックを有する者と音声チックのみの者の2群を比べると、音声チックのみ群で最悪時のチックの重症度が有意に高かった。 後方視的研究では、上述のTS患者のうち現在通院中の25名(平均27.5歳)を対象に、チックの重症度(STSSS)、最悪時年齢等を再評価した。初回評価時年齢が17歳以下と18歳以上の2群を比べると、18歳以上群で最悪時と再評価時のチックの重症度の変化が有意に小さかった。さらに、チックの制御との関連が示唆される感覚現象に注目し、2010~2011年に臨床症状を評価して現在通院中のTS患者17名(平均28.0歳)を対象に、再評価した。初回評価時の感覚現象及び強迫症状が、再評価時のチックの重症度(Yale Global Tic Severity Scale: YGTSS)と有意に相関していた。 最悪時年齢、感覚現象、強迫症状がチックの重症度を予測する可能性が示唆され、さらなる検証が望まれる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
後方視的研究のデータ収集がやや遅れており、その解析に基づいて実施する予定であった前方視的研究の評価バッテリーが確定していない。
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今後の研究の推進方策 |
後方視的研究のデータ収集・解析を進めると同時に、前方視的研究の評価バッテリーの整備を行う。その際に、臨床コホートの調査にとって適切であると同時に、後方視的研究の成果を踏まえて、横断データとして地域の思春期コホートのデータとの比較検討を行っても有意義な結果が得られるように考慮する。そして、評価バッテリーが整備され次第、調査を開始する。
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