研究実績の概要 |
運動チックと音声チックを有する慢性チック障害であるトゥレット症候群(Tourette syndrome: TS)では、思春期にチックの最悪時を迎えてから軽快することが多いが、成人後も重症なチックが続くこともある。チックの予後予測要因の解明は、自己制御理解上も有意義と思われる。 2004~11年に臨床評価をしたTS患者191名中、継続通院している40名(男性26名、女性14名; 平均25.3歳)について、チックの重症度(STSSS及びYGTSS)、QOL(WHOQOL26/PedsQL, WHO-5)、全般的機能(GAF)を評価した。最悪時のチックの重症度(STSSS)は、再評価時のチックの重症度(YGTSS)、全般的機能及びQOL(WHOQOL26、 WHO-5)と関連がなかった。STSSSによる最悪時から再評価時までのチックの重症度の改善度は、WHOQOL26及びGAFと有意な相関があった。 2010~11年にチックに先立つ感覚現象である前駆衝動を含めた臨床症状を評価したTS患者中、継続通院している20名(男性15名、女性5名; 平均29.6歳)について、チックの重症度(STSSS及びYGTSS)、前駆衝動(PUTS)、より幅広い感覚現象(USP-SPS)、強迫症状(Y-BOCS)、QOL、全般的機能を評価した。USP-SPSによる感覚現象及びY-BOCSによる強迫症状は、再評価時に重症度が有意に減少していた。再評価時のWHOQOL26は、初回評価時のY-BOCSと有意な負の相関があり、再評価時のGAFは、初回評価時のYGTSSと有意な負の相関があった。 最悪時のチックの重症度よりもその後のチックの改善度が、QOLや全般的機能と関連すると示唆された。思春期~成人期の経過中では、強迫症状が重症なほどQOLが不良になり、チックが重症なほど全般的機能が低くなると示唆された。
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