公募研究
本新領域研究で開始されているTokyo Teen Cohortでは、2年間で200-300サンプルの唾液サンプルを収集予定である。パイロシーケンシングという手法を用いてこれらのサンプルのDNAメチル化解析を行う予定であるが、多検体で複数箇所のDNAメチル化解析を行うことは時間やコストの面で制限の多い手法である。そのため並行して次世代シーケンサーを使用したDNAメチル化解析系の構築を検討している。パイロシーケンシングでは一度に解析できるDNA長は30塩基対(CpG部位としては3ヶ所程度)ほどであるが、次世代シーケンサーでは一度のランで500塩基対ほどの領域を複数箇所解析できると期待される。今回試験的に11番染色体長腕の470 塩基長(41ケ所のCpG部位を含む)におけるDNAメチル化解析を行った。人工的にメチル化、非メチル化したDNA検体を混合して使用した予備的解析では相関係数0.88-0.98と、十分な定量性を確認できた。さらに末梢血DNAを34サンプル使用して解析を行ったところ、41か所のCpG全てにおいて0.1%の解像度で全サンプルのDNAメチル化率を決定することができた。これらのことから、次世代シークエンサーを用いたDNAメチル化解析法はコホートサンプルの解析において有用であり、パイロシークエンシング法と併用しての解析が行われることが期待される。また、双極性障害患者および健常者の末梢血DNA各500サンプルを使用して、セロトニントランスポーター(SLC6A4)遺伝子の上流領域のDNAメチル化解析をパイロシークエンシング法で行った。その結果患者―健常者間で有意差が認められたことから、解析を行った領域は環境要因の影響を反映しやすい領域であることが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
多検体解析に必要となる、ハイスループットなDNAメチル化解析の系を構築することができている。また精神疾患患者由来の多検体の末梢血DNAサンプルを使用して、解析の候補領域の予備解析を行った結果、有意なDNAメチル化率差異を見出しており、今後のコホートサンプル解析における有用性を示している
今後は回収されたコホート唾液サンプルからのDNA抽出を順次進めていく。さらに回収したDNAのバイサルファイト変換、候補領域のPCR、パイロシーケンサーと次世代シーケンサーを併用したDNAメチル化率定量を進め、コホート研究で得られたホルモン測定結果およびアンケート項目との関連を検討する。
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生体の科学
巻: 65 ページ: 595-600
http://www.molpsy.com/index.html