研究領域 | 精神機能の自己制御理解にもとづく思春期の人間形成支援学 |
研究課題/領域番号 |
26118707
|
研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
松井 三枝 富山大学, 大学院医学薬学研究部(医学), 准教授 (70209485)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 脳形態 / 発達 / 前頭葉 / 辺縁系 / MRI / DTI / 海馬 / 灰白質 |
研究実績の概要 |
本研究では、乳児期から成人期初期までの脳形態画像にもとづいて、人間の認知機能の最高次の中枢といわれる前頭葉と、記憶、情動や動機づけなどの根幹的な働きにかかわるといわれる大脳辺縁系における形態学的特徴の発達を調べる。また各脳領野をつなぐ白質繊維束の同定を行ない、その方向性の強度について調べ、その発達変化も検討することが目的である。本年度は、乳児期から成人期初期までの脳磁気共鳴画像(Magnetic Resonance Imaging: MRI)および拡散テンソル画像(Diffusion Tensor Imaging: DTI)の健常データベースにもとづき、脳形態学的特徴の発達の検討を行った。MRIについては、前頭葉・側頭葉および大脳辺縁系の重要部位海馬・扁桃体の体積の検討を行なった。DTIについては、脳梁、海馬帯状束、上縦束、下縦束、の主要な交連繊維と連合繊維を各DTIで同定し、拡散異方性に関係する代表的な指標の値を各繊維束で求めた。結果、脳体積のピーク年齢は前思春期に認められ、女子では男子より1~2歳程度早かった。灰白質の体積は、全脳、前頭葉、側頭葉のいずれにおいても、乳児期に急激に増大した。灰白質体積が前思春期にピークを迎え、以降減少していたことは、幼児期までに過剰に形成されたシナプスの刈込みによって機能的洗練が生じるという仮説を支持していた。灰白質体積のピーク年齢が、側頭葉では前頭葉より遅かったことは、感覚・運動機能を司る部位の成長が早く、言語や記憶などの機能と関連する部位の成長が遅いという仮説を支持していた。また前頭葉と側頭葉の体積増加が、5~6歳を境に右側優位から左側優位に逆転したことは、言語機能の発達との関連を示唆した。さらに、神経線維束のFA値の差異が認められ,脳梁,上縦束,下縦束,海馬帯状束の順に高かった。神経線維束のFA値が最大値の90%に達した時の年齢は脳梁,海馬帯状束,上縦束,下縦束の順に低かった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
MRIとDTIの解析を比較的順調にすすめることができ、ある程度の結果を出すことができたため。
|
今後の研究の推進方策 |
今後の検討課題は以下である。①MRIとDTIの結果の関連を明らかにすることと、②可能な限り、前頭葉、とくに前頭前野に関してMRI上でより詳細な解析をし、発達特徴を明らかにすること、 ③乳児期から成人期までの我々の保持する認知機能の健常データベースに基づき、健常な認知機能の発達を検討する、④ 健常のMRI,DTI,認知機能の個々に解析された結果について、年齢との関係を統計学的に検討する、⑤可能な限り、統合失調症の認知機能および形態学的特徴について健常者のデータと比較検討する。とくに10代前半から20代後半にかけての患者と健常者の比較検討を、年齢をひとつの指標にしながら行なう。
|