研究実績の概要 |
2007 年にはHeckman (2000 年ノーベル経済学賞受賞者)が,2011 年にはMoffitt らの研究グループが,いずれもPNAS 誌において,子ども期のパーソナリティ特性,とりわけ自己制御が,後の人生において重要な結果 (e.g., 学業達成,健康状態,裕福度,犯罪歴)に対して長期にわたって影響を与えることを報告した。しかしながら,その間の時期=思春期における自己制御の構造と予測力については未解明の部分が多い。 そこで,平成26年度における研究では,9-18 歳を対象とした質問紙調査をウェブ上で実施し,単胎児家庭1,200組, 双生児家庭2,022 組から有効回答を得た。調査においては,思春期における自己制御の構造について複数の指標を用いて(e.g., conscientiousness, grit, effortful control, self-control),横断データに基づく思春期の自己制御の擬似的な発達の様子の確認を行い,また,認知能力と同様に,“汎用的な”自己制御は存在するかどうか探究を行った。その結果,自己制御に関連する心理学的構成概念は,(1) (共感性や援助行動などの知見と同様に)思春期の間には平均値のレベルでは顕著な得点の上昇は示さないこと,(2) 思春期の自己制御の個人差には遺伝率が約60%あり,年齢が上がるにつれて遺伝率も上昇すること,(3)共通経路モデルを用いた分析では各指標の背後にひとつの潜在因子を仮定することができ,これは認知能力と同様に一般に汎用的な自己制御の存在を示唆する証左のひとつと言える。
|