公募研究
2007年にはHeckman(2000 年ノーベル経済学賞受賞者)が,2011年にはMoffittらの研究グループが,子ども期のパーソナリティ特性のうちとりわけ自己制御が,後の人生において重要な結果(学業達成,健康状態,裕福度,犯罪歴)に対して長期にわたって影響を与えることを報告した。しかし,子ども期と成人期の中間に当たる時期=思春期における自己制御の構造と予測力については未解明の部分が多い。そこで,平成27年度における研究では,昨年度に有効回答を得た9-18歳のいる双生児家庭2,022組を対象とした2度目の縦断調査をウェブ上で実施し,約1,200組から有効回答を得た。ウェブ調査においては,conscientiousnessの指標を2つ, grit, effortful control, self-controlの合計5つ指標を用いて,思春期における自己制御の個人差の測定を行った。多変量遺伝分析の結果,自己制御の個人差のうち遺伝相関は0.8程度,環境相関は0.4程度と相対的に遺伝的な影響の度合いが高いことが明らかとなり,また同時にこの高い遺伝相関は自己制御を測定している複数の指標が遺伝的には類似した構成概念を示すことを意味している。さらに,共通経路モデルを用いた分析では各指標の背後にひとつの潜在因子を仮定できることを追試し,さらに,児童・生徒たちの学校適応を規定するひとつの要因と考えられる学業成績に関する共通潜在因子との間の遺伝・環境相関を確認したところ,いずれも場合も0.5程度の相関が認められた。このことは,自己制御の得点を高めるような遺伝・環境要因はそれぞれ学業成績を高めるような遺伝・環境要因とも中程度に関連性があることを示しており,自己制御を高めるような環境要因に基づく仕組み・取り組み・デザインが引いては児童・生徒の学業成績の向上にもつながり得ることを示唆している。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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教育心理学年報
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Modern Rheumatology
10.3109/14397595.2015.1135856
PLOS ONE
巻: 10(8) ページ: e0135357
10.1371/journal.pone.0135357
Psychologia: An International Journal of Psychological Sciences
巻: 58 ページ: 15-26
10.2117/psysoc.2015.15