研究領域 | 精神機能の自己制御理解にもとづく思春期の人間形成支援学 |
研究課題/領域番号 |
26118712
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
岡 靖哲 愛媛大学, 医学部附属病院, 准教授 (60419025)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 睡眠覚醒機構 / 精神機能 / 自己修復 |
研究実績の概要 |
小児~思春期に顕在化する睡眠覚醒調節の不全が,行動・発達や高次精神機能の自己形成に及ぼす影響を明らかにし,介入による修復効果を確認するため,初年度の検討を行った. 臨床的検討としては,睡眠覚醒と精神機能との関連を詳細に検討する目的で,睡眠覚醒の問題を有し愛媛大学病院睡眠医療センターを受診した小児~思春期患者36名を対象に,問診票による睡眠と行動発達の評価(児童青年期睡眠チェックリスト,強さと困難さ質問票),終夜睡眠ポリグラフィ(夜間睡眠の量的・質的評価),ならびに反復睡眠潜時試験(過眠の日内変動)5セッションを実施,同時にCogHealth検査を4回施行して,認知注意機能の日内変動を測定した.今後,睡眠覚醒の治療的介入を行った症例にて同様の評価を行い,精神機能の改善を検討する. 教育現場での介入研究として,夏期休暇を利用したワークブックによる睡眠習慣改善プログラムを開発し,愛媛県久万高原町の全中学生204名を対象に検討した.ワークブック配布前のベースラインとして,睡眠・行動発達評価,身体・不安尺度,メディア利用調査を実施し,夏期休暇1週前よりワークブックを開始した.ワークブック回収率は83.3%で,ワークブックで設定した3つの課題の自己達成率は,規則正しい生活習慣の確立 72%,光環境の調整 52%,メディア環境の調整 53%であった.夏休み後の改善として,朝の起床の改善 15.8%,夜の寝つきの改善 14.3%,日中の眠気の改善 8.6%,日中の元気な活動 29.5%であり,短期的な介入効果が確認された.ワークブック終了6か月後の睡眠・行動発達・メディア利用についてのデータも収集を終えたところであり,中期的介入効果を明らかにするためベースラインとの比較解析を現在行っている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
睡眠覚醒の問題を有する小児・青年期患者のリクルートはこれまで順調に進んでおり,ベースラインの評価(睡眠・覚醒・認知注意機能評価)を実施している.研究代表者の入院によって新規の治療介入に若干の遅れはあるものの,連携研究者により治療介入の継続を行っており,初年度の計画は概ね達成されているものと考える.また,研究開始後に地域教育現場での介入研究が新たに可能となったため,当初計画に追加して実施した.その成果を解析中であるが,臨床的介入とは異なる群および手法での介入効果の検討は,睡眠への介入による精神機能の修復を別の側面からとらえることができ,有用と考えている.
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今後の研究の推進方策 |
初年度に引き続き,睡眠・覚醒の問題を有する児のベースライン評価と,治療介入後の修復効果について研究を継続する.治療介入後の評価機材として,当初は脳波・心電図等をチャンネル毎に個別の携帯型機材で記録して統合する方式を予定していたが,睡眠関連生体情報を1台で記録できる携帯型機材が国内で入手可能となり機材を変更した.このことで治療介入後のデータ収集開始に若干の遅れを生じたが,現在進行中である.地域中学生を対象とした介入研究については,直近で回収した介入6ヵ月後のデータを整理中のため解析を終えていないが,その結果をフィードバックし,ワークブックに改善を加えて再度今年度にも介入効果の検討を模索している.
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