公募研究
本研究は言語学習の臨界期について前頭葉機能の発達と音韻、推論の言語学習の関係性を明らかにすることを目的としている。本年度は児童期、思春期、青年期の3群について昨年度に行った音韻学習と推論学習についての行動実験、NIRSによる脳機能実験、および前頭葉機能(自己認識、意思決定など)や思春期指標、知能などの質問紙検査の大規模データの解析を行った。同時に学習時のドロップアウト参加者を補足する追加実験を行った。特にNIRSデータは昨年検討した脳活動の解析ばかりでなく、脳機能結合の解析を行い学習前、学習後および年齢群による違いを検討し、結果を下記の様に得た。英語/r/, /l/の音韻学習:(1)年齢群に関わらず一定の学習効果がみられた→思春期を越えても外国語学習が可能(2)脳機能は児童期と思春期、青年期で違いが見られた→思春期・青年期で学習後に右上側頭部の賦活が強い。音韻同定時にブローカ野、背外側前頭前野(DLPFC)と右側頭部の機能的結合が強まる。学習後に左側頭極と前頭極の結合が強まり、結合が強い程音韻弁別が向上推論学習:(1)どの年齢群も学習後に推論課題成績が向上したが、児童期のみ有意差。(2)学習後に左右のDLPFC活動が強くなるが、特に児童期で顕著。ただし、この活動が強い程、推論課題の反応が遅い。(3)思春期、青年期は学習後に下頭頂小葉とDLPFCの結合が強まる以上の結果より音韻、推論いずれの学習においても思春期、青年期では前頭葉と特定の側頭部の結合が強まる一方で、児童期では前頭葉との長い結合がみられないことが示された。言語学習の脳内機序の変化は11-14歳で生じることが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
予定していた3つの年齢群による音韻学習実験、推論学習実験の大規模な実験を完了し、不足分の追加データも取得した。データ解析は、脳機能結合解析でやや難航したが概ね順調に進んでおり、今後の解析もほぼ見通しがついている。
今後は、質問紙検査で得た前頭葉機能(自己認識、意思決定など)や思春期指標、知能についての大規模データがどのように音韻(知覚)学習、推論学習およびそれらの脳内機構に関わるのかを多変量解析により明らかにする。脳機能結合解析をより精緻化させる。これらの成果について論文を執筆、投稿する。新規実験として外国語学習における、統計学習アプローチと規則に基づく学習のアプローチの2つが異なる年齢群にどのような学習効果をもたらすかについて、児童期、思春期、青年期について検討する。
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ベビーサイエンス
巻: 13 ページ: 印刷中
NeuroImage
巻: 103 ページ: 476-484
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