研究実績の概要 |
霊長類は、シナプス形成において初期に増大し、ピークに達すると、急速な刈り込みがおこる。思春期はちょうど、霊長類においてシナプスの刈り込み期に当たっており、多くの因子によって、過剰な刈り込みが起こりやすい時期にあたっていると考えられる。これまでの、シナプス形成のメカニズムは主として、げっ歯類を用いて行われてきたため、霊長類特有で、自閉症発症期に、急速にシナプスが減少する刈り込み減少のメカニズムは調べられていなかった。 我々は、小型で繁殖も容易で、高い社会性を持つマーモセットのスパインの、シナプス数がピークになっている時期と、急速にシナプスが刈り込まれている時期の遺伝子発現の違いを調べ、シナプス刈り込みの基本となっている遺伝子を探索した。 最初に、マーモセットのシナプス数を、錐体細胞内色素注入法を用いて、A12, A8/9B, A24, TE, V1の基底樹状突起の数の経月的な変化を追求する。ピークの時期は、どの領域でも、生後3ヶ月であることを明らかにした (Sasaki, Ichinohe et al., 2015; Oga, Ichinohe et al., 2013)。また、急速にpruningが起こる時期が生後6ヶ月であることを、あきらかにした。 このデータを用いて、生後3ヶ月、生後6ヶ月のマーモセットの大脳皮質の領野を採取し、microarrayで解析を行った。 上記の結果、1)microgliaと補体などのTag分子が相補的に、関与しつつpruningが進行することが、わかった。2)NMDA抑制タイプのNMDA受容体の上昇が明らかになった。3)Relnの低下が見られた。4)Axon guidance 分子の一部の貢献が見られた(Sasaki, Ichinohe et al., 2014a,b).
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