研究領域 | こころの時間学 ―現在・過去・未来の起源を求めて― |
研究課題/領域番号 |
26119504
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
水挽 貴至 筑波大学, 医学医療系, 助教 (60463824)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 時間 / 遅延 / 時間割り引き / 報酬 / セロトニン |
研究実績の概要 |
①実験課題の調整を行った。本課題では、一定時間バーに触り続け、所定の時間が経過したら直ちにバーから手を離せば報酬である水が与えられる。その際、時間の経過量は、実験動物の内的な推定に基づいて判断しなければならない。当初の計画では、バーに触り続ける時間範囲を何らサルに示さず、サルの試行錯誤のみを通じて学習させるものとした。しかしこの手法では、仮に課題に成功できるようになったとしても、実験者の想定する遅延時間をサルが理解したことにはならない。このため以下のように課題の調整を行った。課題導入直後は、バーに接触し続けなければいけない時間を、WAIT視覚刺激を提示している間によって示し、学習が進むにしたがって視覚刺激の明度を下げ、最終的には提示しないようにする(明度0にする)という、dimming cue learning paradigmを用いることとした。次に、WAIT視覚刺激を提示する試行とそうでない試行をランダムに行わせ、各々の行動成績ができるだけ近接するように学習を促した。現在もトレーニングを行っているところであるが、行動成績は徐々に改善する傾向を示し、まだプラトーに達していない。以上の成果については2回の領域班会議において報告した。 ②これと並行し、本研究を着想する原点となった、2種類の異なる多試行報酬スケジュールを選択させるという実験についても精査を行った。この実験結果は既に記録を終えており、本研究の課題を改善したり、結果を解釈したりするうえで今後必要となると考えられる所見の有無を、実験と並行して検討した。その結果、作業負荷を段階的に変化させた場合のサルの時間割引係数と、時間割引における眼窩前頭葉の関与について確認できた。以上は、今後本実験を進展させるうえで有用と考えられる成果であった。この成果については国内学会1件と国際学会1件において報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までのところ、ほぼ当初の計画通り進展している。
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今後の研究の推進方策 |
今年度前半には、課題の学習を完成させ、急性トリプトファン除去(ATD)を導入する。ATDによって脳内セロトニン濃度は一時的に低下するとされており、その状況でのWAIT刺激無し試行の成績の変化を確認する。もしその結果が望ましいものであれば、頭部にマイクロダイアリシスを行うために必要なポートを取り付ける手術を行い、脳内セロトニン濃度と時間の推定能力との相関を確認する。もしATD条件における行動レベルの結果が望ましくなければ、抗セロトニン作用やセロトニン賦活作用などを有する薬剤を用い、行動が変調しないかを確認する方針とする。
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